研究課題/領域番号 |
20K01729
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
肥前 洋一 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (10344459)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 政治的文脈 / 投票 / 政治経済学 / 実験政治学 / 実験経済学 |
研究実績の概要 |
本年度は、次年度以降に実施を予定する実験室実験のデザインのため、次の3つをおこなった。 (1)投票参加や政治的意思決定に関する先行研究の調査をおこなった。なかでも、投票の義務感は、近年、その度合いをどのような質問によって測るかを再検討する研究が出ている(Blais & Galais 2016)。義務感は、購買などの経済の文脈にはない捉えられ方であり、政治と経済という2つの文脈における意思決定の本質的な違いを探るうえで重要である。 (2)過去に実施した投票と購買の意思決定の違いを探る実験室実験の結果の再分析をおこなった。この実験では、投票と購買の違いは、それらの文脈を排すると、効用の発生源の違いに集約できることを演繹的に示したうえで、それが被験者たちの選択の意思決定にどのように影響するかを検証している。これをもとに、文脈の効果を検証するという本研究の目的に合わせて、文脈を残したまま文脈以外は同じ意思決定の構造になるようにデザインし直した。 (3)過去に実施した実験のうち本研究課題に関係するものについて、すでに得られているデータの分析をおこない、論文を書き上げて学術誌に掲載した。Hizen (2021)は、住民投票の最低投票率というルールが有権者の投票行動と結果に与える影響を探る実験を実施したが、各被験者は1(投票に相当)または0(棄権に相当)のいずれかを選び、1を選んだ人数の多いグループが高い報酬を得るという抽象的な文脈を用いている。Katsuki & Hizen (2020)も、選択肢は抽象的にアルファベット(AとB)で与えているが、被験者たちがグループとしてどちらを選ぶかを決める際には「投票をおこなう」と説明して文脈を付している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症の流行により、実験をデザインするための情報収集や意見交換を目的とした学会・研究会・打ち合わせのための出張をすべて取りやめた。しかし、それらの多くはオンラインで代替されたので、大きな影響はない。もっとも、次年度から計画している実験室実験が実施できるかは感染症の流行状況に依存するため、対面での実験に固執せずに、複数の方法を考えながら研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
感染症の流行状況を見ながら実験室実験のタイミングを計る形での研究推進となる。必要に応じて、対面式の実験室実験以外の方法((1)被験者たちが自宅からインターネットを通じて参加するもの、(2)ウェブ上での質問調査に実験を組み込むもの)も準備する。(1)は別のプロジェクトで協働している実験経済学者が実施体制を整えており、(2)はさらに別のプロジェクトで協働している政治学者たちが専門としているので、助言を得ることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験をデザインするための情報収集や意見交換を目的として、学会・研究会・打ち合わせのための旅費を主な使途として計画していた。しかし、感染症対策としてすべての出張を取りやめたため、次年度使用額が生じた。次年度も出張は難しいことが見込まれるため、旅費として計画していた額を感染症流行下でのさまざまな方法での実験実施のための設備備品費や謝金等に充てたい。
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備考 |
ディスカッションペーパー: Hizen & Kurosaka, "Monetary Costs Versus Opportunity Costs in a Voting Experiment," SDES-2021-1, Kochi Tech. 研究会発表: 肥前洋一「将来世代の利益を反映させるための投票方式に関する実験室実験」フューチャー・デザイン・ワークショップ2021, 2021年1月24日.
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