研究課題/領域番号 |
20K01730
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
玉田 康成 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (30265938)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組織内競争 / 仲裁者 / 決定権限 / 選好の多様性 |
研究実績の概要 |
研究計画では政府組織に焦点を当て、官僚(エージェント)と政治家(プリンシパル)とのあいだでの権限配分と政策間の対立と調整、そしてエージェントのインセンティブについての問題を提示している。 今年度は、そのための準備的な研究として、政府や企業といった一般的な組織内での対立と権限配分(組織構造)についての研究をおこなった。組織において、異なる選好をもつ複数のエージェントが自分の選好に基づいてプロジェクトを計画するが、実際に実行されるプロジェクトは限られている場合、どのプロジェクトが実際に遂行されるかについての対立がエージェント間に生じる。そのような状況で,例えば政治家や経営者などの中間的な選好を持つ仲裁者にプロジェクト遂行の権限を渡すことで、エージェントたちのプロジェクトへの投資インセンティブが高まることを明らかにした。 その理由は主に2つに分けることができる。まず、エージェント間でプロジェクトの遂行を決定する場合、プロジェクトの開発に成功したエージェントは遂行のために譲歩が必要となることがあるが、遂行の権限が仲裁者に集中するなら、必要な譲歩の水準は小さくなる。 また、エージェントが遂行の権限を持つ場合は、それぞれが好みのプロジェクトを選ぶためにばらつきが生じるが、仲裁者が権限を持てばばらつきが抑えられるので、エージェントがリスク回避的ならば保険としての効果が働く。 今年度の研究では、仲裁者としての政治家や経営者に焦点を当てたことに新規性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうちの準備的な研究については順調に進展しており、ワークショップでの報告により完成度を高めた上で、国際ジャーナルにも投稿済みである。研究計画の次のステップについても、すでに論文の作成を進めている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では主に理論分析を中心に考えているが、問題の重要性を適切に把握するためにも様々な組織についての実例を丁寧に考える必要がある。また、研究計画では政府組織に焦点を当てており、今後はそこに焦点を当てたより具体的な分析を進めておく予定である。 当初の計画では共同研究者を訪問し集中的に研究を進める予定だったが、コロナ禍により実現できなかった。状況が改善すれば共同研究者との直接的なコミュニケーションを試み、またワークショップや学会での報告にも精力的に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で海外の共同研究者を訪問することや、海外での学会に出張して報告することができなかった。 今年度は状況が改善すれば共同研究者を訪問して研究を進める予定である.また,現在準備中の論文の国際ジャーナルへの投稿をすすめていく.
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