研究課題/領域番号 |
20K01733
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
安藤 道人 立教大学, 経済学部, 准教授 (10749162)
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研究分担者 |
北村 周平 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (90812090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 介護保険 / 自殺 / 社会的セーフティーネット / 居住の貧困 / 制度導入効果 / 効果の異質性 / 地方財政史 / 就学前教育 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、(1)介護保険の導入効果に関する査読付き英語論文(IZA Journal of Labor Policy)、(2)コロナ禍の失業と自殺・社会的セーフティネットの関係に関する査読付き英語論文(PLOS ONE)、(3)所得水準と住環境の関係性およびその異質性に関する日本語論文(本の一章)を刊行した。 また論文の刊行・公開にまで至っていないものの、(4)日本の幼稚園拡大が青少年期のアウトカムに与える影響の検証、(5)保育園入所が夫婦の家事育児分担に与える影響の検証、(6)戦前の大恐慌期の地方財政拡大(高橋財政)が自殺抑制に与えた影響、(7)地方財政および財政調整制度の長期統計の構築・分析、(8)コロナ禍の失業やセーフティネット利用が自殺増や自殺抑制に与える影響の分析((2)の研究の続編)も進めた。このうち、(4)についてはプレプリント公開や論文投稿の直前まで研究が進んでおり、(6)については2021年度は学会報告論文を作成し、報告した。 当初の研究計画と比較すると、(2)や(8)のコロナ禍と関連する研究に比較的多くの研究時間を配分したが、(4)(5)(6)の研究においても論文の作成や推敲を行う段階に至った。(7)については、戦前・戦後を通じた長期パネルデータの構築・結合・グラフによる視覚化が、歳出・歳入の主要な変数において一通り終了し、欠損値やはずれ値の確認、デフレータやGDP比などによる標準化などの作業を進めた。なお(8)についてはショートペーパーの迅速な作成および論文投稿を模索しながら分析を進めた。 多くのプロジェクトを同時並行的に進めていることやコロナ禍によって想定外の研究プロジェクトを立ち上げたことにより、やや想定よりも遅れているプロジェクトもあるが、どのプロジェクトも査読論文化に向けて作業を進められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年は、当初の計画と異なり、研究プロジェクトの優先順位を変更したことが最大の理由である。優先順位の変更は、主に以下の2点である。 第一に、上記(1)から(8)の研究のうち、(2)コロナ禍の失業と自殺・社会的セーフティネットの関係に関する査読付き英語論文(PLOS ONE)の刊行や(8)コロナ禍の失業やセーフティネット利用が自殺増や自殺抑制に与える影響の分析((2)の研究の続編)は、当初の研究計画になかった研究プロジェクトである。しかし、コロナ禍における時事的な重要性も考慮して、優先的に研究を進めた。 第二に、地方財政史研究においては、当初は(7)地方財政および財政調整制度の長期統計の構築・分析を優先的に進める予定であったが、2021年度においては、(6)戦前の大恐慌期の地方財政拡大(高橋財政)が自殺抑制に与えた影響の研究を優先的に進めた。これは、(6)の研究が、(2)や(8)の研究と共通する社会的背景や問題関心があることや、財政史研究や恐慌研究としての重要性も高いと判断したためである。 また、就学前教育の研究についても、やや研究が遅れた。第一に、(4)日本の幼稚園拡大が青少年期のアウトカムに与える影響の検証については、当初の想定よりも、多くの追加分析や推敲が必要になっており、プレプリント完成の直前段階で、さまざまな見直しや再分析を行なっている。そのため、予定よりもプレプリント完成や論文投稿が遅れた。第二に、(5)保育園入所が夫婦の家事育児分担に与える影響の検証についても、メインとなる統計分析は一通り終了しているものの、追加的に行う予定の間接効果の推定などを試行錯誤しているため、予定よりも遅れている他、他のプロジェクトを優先したため、プロジェクト進行に遅れがでた。
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今後の研究の推進方策 |
上述した(4)から(8)の研究の論文化を進めていく。 (4)の幼稚園論文については、2022年度の早い段階でプレプリントを公開し、トップフィールドレベルのジャーナルに論文投稿する予定である。(5)の保育園論文については、現在、ドラフトの作成と追加分析の実施を行なっており、比較的簡潔な英語論文としてまとめ、経済学ジャーナルあるいは家族研究ジャーナルへの投稿を検討している。(6)の高橋財政論文については、現在のドラフトにさまざまな追加分析などを加え、年内には経済史分野のトップフィールドジャーナルに投稿できるレベルの論文にし、投稿したい。(7)の地方財政統計研究については、長期的な統計整理・分析プロジェクトであるため、まずは記述統計をまとめた論文を年内に作成した上で、その先の目標である財政調整制度の導入効果の検証の分析作業に入りたい。(8)のコロナ禍の継続研究については、現在、どのような形で論文化が可能かの検討を進めており、その目処がつき次第、ショートペーパーとしてまとめる予定である。 また、複数の研究プロジェクトを円滑に進めるため、共同研究者やリサーチアシスタントとの役割分担を計画的に設定したい。とりわけ、現在(7)の統計整理・分析を1人のリサーチアシスタントと共同で行なっているが、今年度は本プロジェクトに関わるリサーチアシスタントを1人増やす予定であり、その確保も実現し、5月半ばから作業に加わる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
PLOS ONEの論文掲載が2022年度にずれたため、オープンアクセス費用の支払いが2022年度にずれたため。次年度使用額が発生した。したがって、翌年度分として請求した助成金と合わせて、2022年度におけるオープンアクセス費支払い、資料購入、リサーチアシスタント費用などに充当していく計画である。
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