研究課題/領域番号 |
20K01737
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
仲林 真子 近畿大学, 経済学部, 教授 (90309344)
|
研究分担者 |
山根 承子 大阪大学, 経済学研究科, 招へい研究員 (40633798)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 自然実験 / 教育の効果 / 学校群制度 / 校風 / 校訓 |
研究実績の概要 |
学校教育の成果を測定するのは容易ではないが、海外におけるいくつかの研究は、ランダムネスを取り入れた政策をうまく利用したり、ランダム化比較実験(RCT)を用いるなどして教育効果を測定している。本研究では1970年頃から日本の東海地域で行われていた、進学先がランダムに決定されるという「学校群制度」を利用する。学校群制度のもとでは、受験生は個々の高校を受験するのではなく、A校とB校がペアになった「学校群」を受験し合否が決まる。その後、ランダムにA校かB校に進学先を振り分けられることになる。その結果、ほぼ同程度の成績の生徒が歴史や校風、校則が全く異なる2校で、それぞれ3年間教育を受け、大学等へ進学することになる。当時の資料を入手することができれば、これまで先行研究では明らかにされることがなかった、入学以前の教育によって生じた差を排除した状況で、高校3年間の教育が卒業時の成果にどのような影響を与えるのかについて分析することが可能になる。卒業時のパフォーマンスの違いは、在学した学校の純粋な教育効果であるといえる。学校群制度は、通常内生的に決定される学校選びが外生的に行われた希少な例である。本研究では特に、校風や校則などの目に見えにくい教育の効果について分析している。 ただし昨年度に続き、新型コロナウィルス感染症の影響で、長く移動が制限されていたため、当初計画してた資料収集はまったく進まず、令和2年度に引き続き、小規模なデータで分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画当初(令和1年秋頃)、愛知県の豊橋学校群を組んでいた2つの高校に出向き、開校当時からの年報や広報誌を調査し、年度ごとの進学先、身体測定の結果、出身中学校、図書館蔵書等のデータを得ていた。その後新型コロナウィルス感染症の影響で令和2年度は調査に行くことができず、令和3年度も資料収集に行くことができたのは1回のみであった。本来であれば当初の計画通り、令和2年度および3年度に調査対象となる高校を拡大して、さらに多くのデータと資料の収集を進める予定であったが、やむを得ず小規模のデータをまとめ分析し、研究会等で報告した。その結果、両校の校風、校則の違いが大学進学に影響を与えていることを確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、令和2年度および3年度に実施できなかった調査に出向く予定である。具体的には、対象となる愛知県、三重県の高校を訪問し、広報誌、記念誌、年報等を提供してもらい、下記の項目について、学校群制度実施中(1973年~1988年)と比較のため、学校群実施直前(1970~1972年頃)のデータを収集する。学業アウトプットとして、全国模試の学校平均など、生活態度としては遅刻・欠席者数などを可能な限り入手したい。本研究は新型コロナウィルス感染症の影響で当初計画より2年近く遅れているが、最終目標としては、「目に見える教育」である時間割や使用教科書、男女生徒数等をコントロールした上で、「目に見えない教育」である校風や校訓が学業成績に与える効果について分析し、学会等で発表し、研究成果としてまとめ、教育現場に還元する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は新型コロナウィルス感染症の影響で調査に出向くことができなかったため、予定通り旅費を使用することができなかった。次年度、調査が可能になったら、対象となる高校を拡大して、さらに多くのデータと資料の収集を進める予定である。
|