研究課題/領域番号 |
20K01739
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
熊谷 成将 西南学院大学, 経済学部, 教授 (80330679)
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研究分担者 |
西村 周三 京都先端科学大学, 経済経営学部, 教授 (10027576)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | COVID-19 / Multiple roles / Physician visits / Preschool children / Emergency declaration / Well-being valuation / Work-to-family conflict |
研究実績の概要 |
東大のパネルデータ(JLPS-M)を用いたKumagai(2021a; Valuation of health losses of women with multiple roles using a well-being valuation approach)は、就労者や妻といった複数の役割を持つ中年女性の健康損失が等価世帯所得の1.47倍であり、夫が掃除などの家事労働をシェアすることによって配偶者の健康損失を減らせることを示した。 一方、社会保険診療報酬支払基金の月次データを用いたKumagai(2021b; The Impact of the COVID-19 Pandemic on Physician Visits in Japan)は、2度目の緊急事態宣言後、感染拡大に起因する外来受診件数の低下がほぼ半減したことや、1度目の緊急事態宣言下の未就学児の受診低下の地域差が小さくなかったことを明らかにした。 これまでの科研費基盤研究(C)プロジェクト(2012-14; 2015-18; 2020-23年度)の主要研究成果9本の論文を所収した学術書『ライフスタイルと健康感の経済分析』が22年2月に刊行された。解説文「人々にとって「健康」とは?――解説にかえて――」を分担研究者の西村周三・京都大学名誉教授が執筆した。この解説を頼りに各章の内容を読むことができるとの読者評を頂戴している。同書の内容紹介文は次の通り。 中高年者の健康の「鍵」は何か?夫の家事協力が妻の健康損失を防ぎ、住民のつながりが社会的に孤立しがちな高齢単身者らのこころの健康をまもる。大規模データを用いた精緻な医療経済アプローチで「助け合い」が人々の健康感を高めることを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単著論文2本 (Kumagai 2021a, 2021b) が英文査読誌に採択されたことに加えて、単著『ライフスタイルと健康感の経済分析』を刊行することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
可視化しづらい居住地域の特性が、家族介護に従事することや家族介護時間の決定要因になり得ることを念頭に置いた分析に取り組む。具体的には、内閣府「満足度・生活の質に関する調査, 2019-2020」を用いて、伝統的な家族価値観が支配的な地域において「義務感や社会的圧力から介護を続けており、家族介護者の負担が解消されていない」ことを考慮した回帰方程式を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
単著論文2本のpublication feeの合計額が47万円弱に達して21年度の予算を超過した。そこで、次年度予算を前倒し請求し、publication feeを精算した。その前倒し請求額の残額を22年度に繰り越した。
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