研究課題/領域番号 |
20K01741
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山口 昌樹 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (10375313)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 資本流出 / 東アジア / 証券投資 |
研究実績の概要 |
今年度は、金融ショックによる東アジア諸国からの資本流出においてパターン変化が起きているかを究明した。課題に答えるため、世界金融危機、チャイナ・ショック、コロナ・ショックの3つの金融ショックにおける東アジア諸国からの資本流出をショックの程度を考慮しつつ比較した。この分析から、証券投資の流入拡大によって東アジア諸国からの資本流出は証券投資において顕著になっていることを示す。 アジア通貨危機から四半世紀近くが経過し、複数の外的な金融ショックがアジア諸国を見舞ったが当時のような継続的な資本流出は再発していない。しかし、直近の3つの金融ショックに対する資本流出を観測すると証券投資について流出の規模が縮小したという確固たる証拠は見当たらなかった。四半世紀の間にアジア諸国の資本流出に対する脆弱性は大幅に改善されたものの外的な金融ショックの影響を遮断することはできないことが改めて明らかになった。 金融ショックが資本流出を引き起こすのは金融グローバル化の進展に起因する。通貨危機後にアジア諸国は着実な経済成長を続けて経済規模が拡大したが、それ以上に資本流入の規模は拡大して金融グローバル化が進んだ。国内における脆弱性を克服するだけでなく、アジア地域ではFDIの域内リンケージの形成、現地通貨建て債券市場の深化といった域内の金融安定化に向けて取り組んできた。しかし、証券投資形態によって資本流入の規模が拡大する状況において東アジア諸国はグローバルな金融市場の変動に翻弄される状況が続いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した通りのスケジュールで研究成果を取りまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
国際資本フローとして証券投資に対象を絞り、世界金融危機から2019年にかけての変化を分析する。証券形態での調達と運用を各国間の金融連関における結び付きの度合いの視点から変化を観測するため、直接的な債権債務関係だけでなく間接的な波及効果まで含めて測定することによって国際証券投資における各国の位置づけを示す。なお、分析対象国は69カ国にのぼり国際証券投資の世界的な連関が分析の射程に入る。さらに、2007年から2019年にかけての変化については各国の動向からパターンを析出することによって全体像を浮き彫りにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型肺炎の流行のために予定していた学会への出張を取りやめざるを得なかったため。 次年度使用額については感染状況を考慮しながら出張旅費、データベースの購入代金として使用する計画である。
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