研究課題/領域番号 |
20K01745
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
浅野 貴央 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (40423157)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 曖昧性 |
研究実績の概要 |
2020年度は以下の2つの研究テーマを柱として研究を進めた。 1.昨年度に引き続き、Klibanoff et al. (2005, Econometrica)のモデルに基づき、曖昧性への態度が、意思決定者の投資行動にどのような影響を与えるかについて分析を行った。曖昧性が投資行動に与える効果は、確率優位だけで決定されるわけではなく、投資関数が補完的か代替的かによって異なることを証明した。具体的には、技術ショックが確率優位の概念の一つであるMLRDで順序づけされているとき、生産関数が代替的であるとき(補完的であるとき)、曖昧性回避性が高まったとき資本への投資を増やす(減らす)ことを証明した。この結果は、生産関数の形状によっては、曖昧性回避性が増大したとき、資本投資を増やすという直観に反する結果が導出できることを示している。また、2つの企業がリスク回避的であり、1つの企業が曖昧性回避的、1つの企業が曖昧性中立的である状況を想定しても、同様の結果が得られることを証明した。さらに、確率優位の概念として、MLRDよりも弱い概念である第一級確率的優位(first-order stochastic dominance, FSD)に置き換え、かつ、2つの企業がリスク中立的であることを仮定しても同様の結果が成立することを証明した。本研究は、European Journal of Operational Researchに採択された。 2.belief functionの公理化に関する研究を進展させ、人々のbeliefがbelief functionで表現され、人々のpreferenceがそれに関するChoquet積分で表現されることを証明した。さらに、endogenous knowledge spaceなる概念を提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響により、対面による研究打ち合わせが大きく制約され、また、対面での研究報告が出来なかったため、想定通り研究は進展しなかった。一方で、曖昧性モデルと曖昧性回避度に関する研究論文は完成しなかったが、曖昧性モデルに関する研究論文が国際的学術誌に採択され、さらにbelief functionに関する研究を進展させたため、このように自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度については、オンラインを使った研究交流を利用しながら、前年度までに得られた研究成果を踏まえた上で、曖昧性モデルと曖昧性回避度の研究を進展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウィルスによる国内外の出張取りやめ、学内業務及び他の科研費との関係から、次年度以降に執行した方が適切と判断したため。 (使用計画)ワークステーションの購入費として適切に執行する予定である。
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