研究課題/領域番号 |
20K01746
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山根 明子 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60580173)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 株式リターンのクロスセクション / 超小型株 |
研究実績の概要 |
2021年度には、バリュー株のプレミアムとの関連が指摘されているキャッシュフローリスクや株式デュレーションに関連する分析を中心に研究を進めた。2010年代以降、バリュー株式のプレミアムの低下がいくつかの先進国市場で報告されているが、Goncalves and Leonard (2021)は、その原因として株式簿価が企業のファンダメンタルバリューの情報を持たなくなったことを挙げている。2021年度には、日本市場においても同様の現象が生じているのかどうかを明らかにするためのデータ整理、および日本企業のファンダメンタルバリューの推計を行った。現時点での分析ではファンダメンタルバリューと簿価の関係の時間を通じた変化は観察されず、日本市場では先行研究の仮説を支持する結果は得られなかった。 また、米国市場の分析で用いられるmicrocapの指標を流用し、東証1部上場銘柄の時価総額20%点を基準として超小型株かどうかを区別し、超小型株を除いたケースの分析も行った。その結果、サンプル全体から超小型株を除いたとしても分析結果に大きな違いは生じないものの、大型株と小型株(東証1部上場銘柄の時価総額のメディアンを基準として分類する)の分類は、ポートフォリオリターンの変動に大きな違いをもたらしていることが明らかになった。大型株と小型株のリターンのふるまいの違いは、流動性の程度の違いや情報の反映スピードの違い、金融政策の影響などによるものではないかと考えられるが、この点については今後の研究で明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ファンダメンタルバリューの計測に必要なデータ整理とプログラムの作成に時間がかかり、予想していたより分析が進まなかったため。また、分析結果が期待どおりではなかったことから、研究の方針を多少変更する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、バリュー・プレミアムと関連する企業特性として株式デュレーションに注目し、企業規模との関係やバリュー・プレミアムの時間を通じた変動との関連を明らかにしたい。具体的には、2020年度、2021年度に整理した日本の企業および株式データを用いて株式デュレーションの計測などを行い、プレミアムの変動や超小型株・小型株など企業規模との関連を示す。また、株式デュレーションについては、金利の期間構造と関連付けるような新しい研究が蓄積されてきているため、文献渉猟にも十分な時間をとる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会や学会に参加し、意見交換を行うための旅費として申請したが、2021年度の研究会、学会はオンライン開催となったため次年度使用額が生じた。2022年度に研究会、学会の対面実施が可能であれば、旅費として使用する。
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