研究課題/領域番号 |
20K01749
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
立花 実 大阪府立大学, 経済学研究科, 准教授 (70405330)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 計量ファイナンス / コピュラ / 高次元データ / 金融資産間の依存関係 / リスクマネジメント |
研究実績の概要 |
2020年度に実施した研究では、世界の株式市場の動乱期にどの資産がどの程度、避難資産(Safe haven assets)としての役割を果たしてきたかを分析した。本研究の学術的な貢献は以下の3点である。第一に、既存研究と比べ格段に多くの避難資産の候補を分析対象とした。具体的には、先進国・地域の20の国債と14の通貨、そして金と原油の計36資産である。第二に、既存研究では主に単一の株式市場(例えば米国の株式市場)に対する避難資産が評価されてきたが、本研究では世界の株式市場におけるグローバルな金融危機に対する避難資産を識別している。具体的には、先進国・途上国あわせて46の株式市場のデータを使用した。第三に、これら高次元のデータセットを取り扱う手法として状態変化を伴うファクター・コピュラ・モデル(Regime-switching factor copula model)を新たに開発した。分析の結果、最も避難資産としての性質が高かったのは日本円、続いて米国債であることが分かった。この2資産は他の候補と比較して避難資産としての性質が突出して高かった。2番目に避難資産の性質が高かったグループは米ドル、香港ドル、スイス・フラン、デンマーク・クローネの4通貨であり、3番目に高かったグループは先進国の国債全般(さらにユーロもこのグループに含まれる)であることが分かった。その他の資産については、避難資産としての性質が確認できなかった。本研究の成果は、国際金融市場に分散投資する投資家の資産選択やリスクマネジメント、さらにはマクロ経済政策の運営に役立つであろう。本研究論文は、2021年度4月にプレプリントを公開した上で学術雑誌に投稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画では、2020年度は準備期間と位置付け、いきなり高次元データを取り扱うことはせず、まずは50~100程度の次元を有するデータセットを用いてファクター・コピュラ・モデルに関する知識やプログラミング技術を習得することを第一の目的に掲げていた。さらに当該計画では、ファクター・コピュラ・モデルの応用先として様々な国の株価指数、長期国債価格指数、為替レート、原油や金などの商品価格からなるデータセットを想定していた。それらの研究計画は上記の「研究実績の概要」にあるように達成できたことから、計画通りおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は株価指数や国債価格指数などからなる50~100程度の次元のデータセットを分析したが、2021年度以降は個別企業の株式など個別資産の価格データから構成されるより高次元のデータセットを構築し、それをファクター・コピュラ・モデルで分析することで、よりきめ細やかな金融資産間の依存関係を明らかにしていく方針である。
|