研究課題/領域番号 |
20K01750
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
白須 洋子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80508218)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CSR / 機関投資家 / 海外投資家 / 公的年金ファンド / universal owners / Willing to Pay |
研究実績の概要 |
本年度は初年度であったため、最初に、既に手をつけている論文を学会発表水準までにブラッシュアップすることを目的とした。ESG株式と機関投資家の特性についての実証論文を執筆した。具体的には次のとおりである。 ①論文名:Are foreign institutional investors leading ESG activities in a rapidly expanding market for social investment? 日本における外国人機関投資家とCSR活動の関係について、リーマン後の期間を検証した。その結果、海外の長期投資家の株主比率とESG活動との間には明確な特徴が見られなかった。長期的なPassive投資家の所有者比率が高いと、すべてのCSRカテゴリーでプラスの影響が観察され、さらにGrowthとValue株投資家についても同様な傾向が見られた。さらに、海外のブロックホルダー投資家は、ガバナンスに強い関心を持っていることが判った。 ②論文名:Does the public pension fund improve CSR? 世界最大の公的年金基金であるGPIF は、2015年にPRIへの署名を契機にCSR活動の投資方針を変更し、「Willing to Pay」としてCSR活動を推進してきた。GPIFが委託機関投資家に対してCSRの投資を義務化することで、企業がCSR活動を積極的に推進していたことが判った。特に、GPIFの方針が変更された後、GPIFの委託機関投資家の株式保有シェアが高いとより良いCSR活動を推進していることが明らかになった。この結果は、GPIFが社会的問題を解決する機関である“universal owners”としての公共の利益を追求した結果と解釈することができる。 この他、査読に出していた論文が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外の共同研究者等と直接打ち合わせをしたり、国際学会で発表する予定であったが、オンラインに切り替わってしまい、十分なコミュニケーションがとれなかった。また、足下が不透明なために長期的な計画が立てづらかった。しかし、不安定な状況が定常状態となりつつあるので、そのような環境にも次第に慣れつつあり、手段や方法を現状に合うように見直した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は大きく3つのテーマからなる。①長期機関投資家、②安定性に対する保険、③日本の制度的特殊性、である。②について遅れがちだが、探していたデータ、特許数や投資家毎のDBの存在やその取得方法が明らかになり、数ヶ月以内には取得できる見込みである。データ取得後、特に②に力を入れていきたい。 また、学会発表を予定している2本の論文については、発表までにブラッシュアップするのみではなく、コメントをいただいたらそれに対応し、より推敲していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の共同研究者との打ち合わせがスムーズにできなかったこと、また、海外で開催される国際学会に参加できなかったためである。さらに、海外のDBを購入予定であったが、先行きが見えずらく、計画が不透明となってしまったため、1年様子を見たためである。
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