研究課題/領域番号 |
20K01753
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鯉渕 賢 中央大学, 商学部, 教授 (60361672)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | M&A / セグメント情報 / 買収後パフォーマンス / 生産性 |
研究実績の概要 |
本研究は、3年間の研究実施期間の初年度にあたる2020年度において、次の2つの成果があった。第1は、2000年以降の過去20年間に日本の上場企業において実施された買収価格100億円以上のM&A事例の抽出することの試験的な抽出と精査を行い、セグメント情報でのパフォーマンスの計測という観点で、買収価格500億円以上の事例に絞ることが望ましいと判断されたことである。この結果、潜在的なサンプル数は減少することになるが、以下第2であげるようなより厳密なパフォーマンス評価方法を適用することができるようになると見込まれる。第2は、セグメント情報を用いて、事業セグメント単位の資本と労働投入を考慮したパフォーマンス評価方法を導入するための、手法上の実現可能性を既存文献や同分野の海外研究者のアドバイスを経て検証し、概ね推計が可能であるとの結論に達した。以上の2点の進捗を経て、研究実施計画の2年度の研究を遂行する基礎ができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究過程を経て、本研究の申請時には必ずしも想定していなかったものの、企業のセグメント単位のパフォーマンス評価という面でより正確な推計方法の導入を発想し、既存文献の精査と海外研究者からの知見の提供を受けて。その実現可能性を検証できた。これは、当初の研究目的であるM&A後のパフォーマンスの正確な評価方法の確立という研究課題に極めて一致する望ましい方向性の進展である。一方で、新たな推計方法の導入に伴う、新規の追加的なデータ項目の取得と整理が必要となったため、この点で、追加的な作業が発生し、現在はこの点でのさらなる進捗が望まれている。以上2つの観点から、研究実施期間初年度として、概ね順調に進展しているという判断が望ましいと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施期間の2年目は、セグメント単位の事業パフォーマンスを計測する新しい推計方法のために必要な追加データの取得と整理を完了させたうえで、一部のサンプルに新しい推計方法を実行して検証したのち、それを買収価格500億円以上の全事例に導入することである。その上で、推計結果をまとめた学術論文の執筆にと取り掛かる。研究計画の変更は生じないものの、より専門的な知見を共同研究者との議論を促進して発展させていく必要があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍による海外の国際学会のオンサイトでの実施が中止されたため、そのための害外出張旅費が大幅に余ることになり、次年度以降も、同様の状況が継続すると見込まれたことから、研究課題に沿う日本企業へのアンケート調査の実施を計画しており、そのための予算が期末を跨いだためである。第2年度となる2021年度は、可能な限り速やかに、研究課題に沿うアンケート調査を実施すると共に、それを研究成果に盛り込んで、学術論文を進展させる計画である。
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