研究課題/領域番号 |
20K01757
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
中田 勇人 明星大学, 経済学部, 教授 (10366916)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グローバルショック / エネルギー価格 / 資産価格 |
研究実績の概要 |
本年度は、祝迫得夫教授(一橋大学)と青野幸平教授(立命館大学)と共に構造VAR(ベクトル自己回帰)モデルを用いて、エネルギー市場と外国為替市場のショックが日本株式市場のリターンに与える影響を分析した。構造VARによって、エネルギー市場のショックを取り出すための識別戦略としては、これまでKilian(2009)らによる手法が広く用いられてきたが近年、Ready(2018)が新たな識別手法を提案している。Kilian(2009)らの手法が石油価格に加え、原油生産量と需要の代理変数を用いて供給ショックと需要ショックを識別するのに対し、Ready(2018)では新たな市場モデルを構築し、VIX(恐怖指数)や供給ショックを識別するための石油採掘企業の株価データなど新たな変数を導入している。本研究では、Kilian(2009)らによる手法に加え、Ready(2018)の手法も用いた分析を行って結果を比較した。その結果、Ready(2018)の手法を用いた場合の方が、株式リターンに対する説明力が相対的に高いことが明らかになった。その一方で、Ready(2018)の手法では供給ショック(石油減産による価格上昇)に対して株価が上昇するなど、一部に経済学的に解釈が難しい結果が得られた。この理由として、一部の構造ショックが他のショックを識別された後の残差として得られるため、解釈が難しいことが挙げられる。このような点について次年度以降、さらなる検討が必要とされる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、コロナ感染拡大の影響のため急遽、講義をオンラインに移行したため教育に向けるエフォートを増やさざるを得なかった。また、報告を予定していた国際学会がコロナ感染拡大で一年延期になるなど、研究成果の報告にも影響が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、エネルギー価格のショックが資産価格に与える影響の分析を進めつつ、今年度は各国の資産価格間の相関構造の分析に着手する予定である。 研究成果の発表についても、6月に国際学会での報告を予定しているほか、今年度中に外部研究会で本年度の研究成果について報告することも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の一部遅延、海外学会の延期などによって予定していた支出ができなかった。2021年度、ノートPCの購入や海外学会(オンライン)への参加によって計画していた支出を進める予定である。
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