研究課題/領域番号 |
20K01758
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
久保 克行 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20323892)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | コーポレートガバナンス / 取締役会 / 社外取締役 / 雇用 / 労働 / 経営者報酬 / インセンティブ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、取締役会の構成が従業員に与える影響を実証的に分析することである。この分析を行うためには、取締役会の現状について定量的に理解を行うことが必要となる。近年、社外取締役の増加など、多くの企業で取締役会の構成が変化してきている。また、社外取締役の増加につれて、執行と監督がトップマネジメントチームと取締役会に分離しつつある。このことから、昨年度は取締役会とトップマネジメントチームの現状を把握するための作業を行なった。 それらの作業の結果、日本の取締役会は1990年代から大きく変化してきたことが改めて確認された。取締役の人数が大幅に削減され、社外取締役が導入された。女性や外国人の比率も増加している。これらのことから、日本の取締役会がアメリカや英国の取締役会と近くなったと考えることが可能である。一方で、アメリカや英国の取締役会と日本の取締役会にはまだ多くの相違点が存在する。本年度はその点について特に英国と比較することで分析を行なった。その結果、多様性、社外取締役比率といった多くの点で相違があることが明らかになった。日本の取締役会は英国と比較し、高齢であり、女性比率が低く外国人比率が低い。また、この傾向は取締役会だけではなく、トップマネジメントチームも同様である。 ただし、トップマネジメントチームについては、英国と日本の差は取締役会の差よりも大きいことが明らかになった。例えば、英国ではCEO(最高経営責任者, Chief Exective Officer)だけではなく、CFO (最高財務責任者, Chief Financial Officer)のような、いわゆるCxOと呼ばれる制度を導入している企業が多いことが示されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は取締役会の構成が雇用に与える影響を分析することである。この分析のためには、取締役会の構成の変化を正しく把握することが不可欠である。本年度、上述のように取締役会構成の変化について長期的に確認することができた。また、研究を進めるにつれて、取締役会だけではなく、トップマネジメントチーム全体について把握することの重要性について認識することができた。本年度はトップマネジメントチームについても現状の把握を行うことができた。これらの点から、概ね順調に進展していると考えることができる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、本研究では昨年度までに引き続きデータ分析を進めることになる。具体的には取締役会及びトップマネジメントチームの状況が雇用に与える影響について分析を行う。分析にあたっては、いくつかの課題がある。 課題の一つはトップマネジメントチームの構成をどのように分析に組み込むかということである。トップマネジメントチームの構成については、データの制約から近年のデータのみ収集できている。トップマネジメントチームの構成の効果を明示的に分析するためには過去のデータの収集が必要であるが、データが利用可能かどうかを確認する必要がある。 もう一つの課題は雇用に関するデータである。従業員数及び平均賃金のデータは上場企業の多くについて利用可能であるが、細かいデータについては東洋経済CSR総覧等のデータソースを確認する必要がある。これらのデータベースで利用可能なデータは限られていることから、どの変数に注目するかについては慎重に考える必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染防止のため、予定していた海外への出張がキャンセルとなった。今後、海外出張が可能になり次第出張を行う予定である。
|