研究課題/領域番号 |
20K01759
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
岩澤 誠一郎 名古屋商科大学, 経済学部, 教授 (30635743)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 期待形成 / バイアス / マネードクター |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の株式市場のプロの市場参加者を対象として毎月実施されているアンケート調査「QUICK月次調査<株式>」の個票データを活用し、プロの市場参加者の株価予想と情報処理のバイアスを明らかにすることである。特に本研究では、1)証券会社や投資信託などが、顧客をリスク資産への投資に向け誘導するべくミスリードするような株価予想を行う誘因を持っていること、2)人は意思決定にあたり有用であるがセイリアントでない(顕著性の低い)情報を無視・軽視すること、の二つの点を手掛かりに、そのバイアスを見出そうとする。これまでに類例が少ない、株価予想サーベイの個票データを活用したプロの予想のバイアスの研究である点が学術的な意義であり、プロによる株価予想情報に関する一般投資家のリテラシー向上に資するという社会的な意義も持つ研究である。 2020年度は証券会社や投資信託の「マネードクター」による株価予想を、その他のプロ市場参加者による予想と楽観度、正確さ、ダウンサイドリスクに対する感応度の点で比較し、前者のバイアスを明らかにすることが目的であった。この点を主題とする研究論文“Who Does Better/Poorer Stock Market Forecasts? Evidence from Japanese Professional Survey,”を作成し、現在、改訂を継続して行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は証券会社や投資信託の「マネードクター」による株価予想を、その他のプロ市場参加者による予想と楽観度、正確さ、ダウンサイドリスクに対する感応度の点で比較し、前者のバイアスを明らかにすることを目的としていた。この点を主題とする論文の作成を終えた段階であり、研究はおおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はプロの市場参加者の株価予想における情報処理のバイアスを検証する研究を行う。プロの市場参加者による株価変動要因の評価の中で、株価の予測能力を持つ情報があること、そしてそうした情報が彼らの株価予想には必ずしも生かされていないことを明らかにする。この研究の予備的研究では「QUICK月次調査<株式>」の集計データを分析したが、2021年度はその個票データを用いた分析を行うとともに、「QUICK月次調査<債券>」の個票データ分析の比較も加え、論文を作成する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルスの流行により、地域間の移動が制限されたこともあり、研究活動も制約され、予算の執行に遅れが生じた。2021年度にはこの問題は緩やかに解消に向かうと想定される。
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