今後の研究の推進方策 |
まずは、当該年度得られた研究成果を適当な国際学術誌に公表したい。当該年度の研究では、曖昧性下での参照点依存型意思決定モデルとして、Klibanoff, P.らが考案した滑らかな曖昧性モデルを用いた場合、気質効果の説明モデルとしては、既存研究を凌駕する結果は得られなかった。そこで,今後の研究としては、以下の研究を行っていく。 曖昧性下での参照点依存型意思決定モデルとして、Izhakian, Y. (2017) のExpected utility with uncertain probability theory (J. Math. Econ., 69, 91―103, 以下、EUUPと略す) を用いた場合において、最適資産選択問題を定式化し、この問題の解法と解の性質について考察し、それに基いて気質効果の説明を試みる。 EUUPを用いた場合、資産選択の基準となる価値関数が、従来のリスク下での意思決定モデルである期待効用とは異なり、想定し得る確率分布の集合を変換したショケ(Choquet)容量の下でのショケ積分となるため、制御すべき変数に対して凹性が保証できない点に解法の難しさがある。既存研究には、目的関数の凹性が保証されない階数依存(Rank-Dependent)意思決定モデルにおいて、当初の制御変数対して制御変数の確率点を制御変数とする変換を行うことによって最適解の導出に成功した確率点アプローチがある(H.Jin,et.al (2019) J. Math. Fin.,etc.)。 今後の研究では、まずは、EUUPに対して確率点アプローチの適用を試みることによって最適解の導出に挑戦したい。そして、首尾よく最適解が得られた場合には、この最適化問題に基づいて気質効果の説明モデルを構築し、数値実験などを通じてモデルの現象説明力について考察していく予定である。
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