研究課題/領域番号 |
20K01763
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
田 園 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (10609895)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 負債 / 流動性 / 投資 / 配当 / 外部資金調達 / 倒産 / 曖昧さ |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、コロナ・ショックの影響を踏まえて、負債と流動性マネジメントに関する理論結果を実証研究及び実務現象に結びつけて発展させた。最新の実証研究では、コロナ危機の中、レバレッジの縮小と現金保有の増加現象が共存していると指摘した。それに対して、本理論研究では、債務買戻しの資金を(1)新規株式発行(2)現金(3)資産売却という3つの選択肢から調達されることを考え、既存株主価値の観点からコスト・ベネフィットの比較分析を行った。その結果、レバレッジの下方調整は、資産売却によってしか実現できないことを明らかにした。すなわち、本研究は流動性を明示的にモデルに組み込むことで、資産売却して現金保有の増加とレバレッジの縮小の両方を図るというコロナ危機で広く観察されている資産売却の実務現象及び実証研究に対して理論的に解釈できた。また、関連研究として、不確実性をリスクと曖昧さに分けて、特に曖昧さが企業の投資、配当、外部資金調達等の意思決定に及ぼす影響を分析した論文”Investment, payout, and cash management under risk and ambiguity”を査読付き国際学術雑誌Journal of Banking and Financeにアクセプトされ、掲載された。その他、関連研究を"Capital reallocation and endogenous sustainable growth with ambiguity"という題目で、京都大学数理解析研究所研究集会「ファイナンスの数理解析とその応用」にて発表報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の核心をなす問題意識「負債と流動性の相互依存メカニズムが企業の諸意思決定および株式・負債の価値評価にどのような影響を及ぼすのか」について、詳細にモデル分析を行い、解析的な理論結果及び豊富なモデル示唆が得られた。また、理論結果を実証研究及び実務現象に結びつけて発展させたので、概ねに順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、得られた多くの結果の中から、特にハイライトすべき結果にもっと焦点を当てて、インパクトをわかりやすく示すことに力を入れていく。その上、論文の修正版を査読付き国際学術雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行により、予定されていた国際学会への出張や対面による研究の打ち合わせがスムーズにできなくなったため、次年度使用額が生じてしまった。
次年度使用計画としては、国内外の学会出張や研究の打ち合わせに使用する予定である。
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