研究課題/領域番号 |
20K01766
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅貴 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (30625984)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 曖昧性 / 資産価格 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、確率分布の不確実性(曖昧性)に対する家計の選考を考慮することで、株式、債券、デリバティブを含む幅広い資産クラスに応用可能な、汎用性の高い資産価格モデルを構築することである。 2022年度では、前年度までに構築したモデルが様々な資産価格に対して高い説明力を有するかを、実際の金融市場データを用いて検証した。その結果、当該モデルによって少なくとも株式、短期債券および株式オプションに関する多くの資産価格パズルを解決できることが示された。 本研究のモデルは、伝統的な期待効用理論を一般化したものであり、高い汎用性を有している。この特性により、本研究の分析手法は幅広いファイナンスの理論および実証研究に応用することが可能である。また、本研究が解明した資産価格と曖昧性との関係性は、ポートフォリオ選択や金融政策などに対して強い示唆を与えるものと考えられる。 2022年度には、本研究の内容を国内学会・研究会において4度報告し、参加者との議論から多くの知見を得ることができた。また、本研究の成果の一部は論文に取りまとめられ、査読を経た結果、国際学術誌Quantitative Financeに掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、「曖昧性を考慮に入れた資産価格モデルの構築」は、2022年度までにおおむね達成された。研究成果は論文に取りまとめられ、査読付き国際学術誌に掲載された。 ただし、本研究のモデルは株式およびそのデリバティブに対しては高い説明力を持っているものの、債券への応用に関しては課題があることが判明した。 一般均衡モデルを構築する以上、様々な資産価格を統一的に説明することが求められる。少なくとも、株式と債券という代表的な資産クラスに対して、その価格の動学的特徴を同時に説明できることが望ましい。2023年度では、当該モデルを改良し、債券価格への説明力を向上させることを目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
当該モデルの課題は、債券市場で見られるイールドカーブの形状を十分説明できないことである。これに関しては、家計の選好に曖昧性以外の要素を導入することで対応する。 具体的には、家計の選好に習慣形成効果を導入することを考えている。これにより、異時点間の代替効果が予備的貯蓄効果を上回る限りにおいて、実際の市場で見られる右上がりのイールドカーブを説明できるものと予想する。 2023年度は上記の改良を施したモデルが、実際に株式および債券価格を同時に説明できるか検証する。そして、得られた成果を論文に取りまとめ、査読付き国際学術誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、計画していた学会への出張および研究会の開催が制限されたため。 2023年度はこうした制限が大幅に緩和されることが予想されるため、学会参加および研究会開催を積極的に行い、本研究にフィードバックしていく。
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