研究課題/領域番号 |
20K01768
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
菊池 健太郎 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (60738368)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グローバルファクター / 無裁定価格理論 / 国際連動性 / リスクプレミアム / 2次ガウシアン金利期間構造モデル / 国際証券価格モデル / 国際証券投資 |
研究実績の概要 |
2021年度は、日米金融市場を対象とする国際証券価格モデルの推定を行い、潜在変数とパラメータの推定値を得た。得られた推定結果の経済学的含意を明確にするため、為替リスクプレミアムに関する先行研究の分析内容を調べた。その結果、Dahlquist and Penasse(2022)が、本研究における結果の解釈に有益な視点を与え得ることが分かった。 Dahlquist and Penasse(2022)は、為替リスクプレミアムが、内外金利差以外の要素「Missing Risk Premium(以下、MRP)」からも影響を受けており、同要素が実質為替レートの変動の多くを説明することを実証的に明らかにしている。一方、本研究で構築したモデルでは、潜在変数は、市場横断的な共通変数と為替にのみ寄与する固有変数に大別されるが、後者の為替リスクプレミアムに対する寄与部分がMRPに相当すると考えられる。MRPは実質為替レート変動に対する説明力が高いとの上述の研究結果を踏まえ、2021年度は潜在変数と実質為替レートの関係を明らかにすべく分析を進めた。 本研究は、金融資産のリスク特性を明らかにするだけでなく、投資家の資産配分にも有益な示唆を与え得る。本研究で得られた推定結果を国際証券投資モデルに組み込み、投資家の最適な資産配分を明らかにすることがこの方向における目標となる。2021年度はその準備段階に相当する分析を行った。具体的には、米国の物価連動債、株式市場を対象とする一国市場モデルに基づき、一定の相対的リスク回避度を持ち、長期運用を行う投資家の最適消費・ポートフォリオ問題の定式化・求解、モデル推定値に基づく数値分析を行った。その結果、潜在変数の変動に対してインフレリスクヘッジ需要や異時点間ヘッジ需要が非線形に変動すること等が明らかになった。この研究成果は、2022年3月に国際論文誌への掲載が決まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
無裁定国際証券価格モデルを推定し、金融資産に内包するリスク特性を明らかにする研究は、初年度に生じた遅れを2021年度中に取り戻すことはできず、学会発表や論文投稿はできていない。 遅れている理由として、①経済学的含意を引き出すための文献調査と追加分析に時間を要したこと、②国際証券価格モデルに基づく投資家の最適資産配分に関する研究にも乗り出したことが挙げられる。 ①については、推定された為替リスクプレミアムと実質為替レートの関連性を分析するなど、研究内容の充実化を図ることができている。また、②については、投資家の国際証券投資への示唆を得るための前段となる分析を行い、研究成果が国際論文誌に掲載されるなど、一定の成果を得ることができた。 以上の点を踏まえて、現在までの研究の進捗はやや遅れていると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
途上にある日米金融市場を対象とする無裁定国際証券価格モデルに基づく分析を進める。特に、推定した共通要因を表す潜在変数と金融資産のリスクプレミアムの関係に加え、為替固有の潜在変数と実質為替との関係を明らかにすることに主眼を置く。分析を完了させ、得られた結果を学会発表し、研究成果を国際論文誌へ投稿する。 また、日米金融市場を対象とする無裁定国際証券価格モデルの推定結果を国際証券投資モデルに組み込み、投資家の最適な資産配分を明らかにするための分析を行う。得られた成果を学会で発表し、国際論文誌へ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、国際会議への参加を2件予定していたがいずれも中止となったため、次年度使用額が生じた。2022年度は、国際会議に参加可能な状況であれば参加するが、参加が難しい、もしくはオンライン開催となる場合も十分予想される。その場合は、旅費での支出が減少することになるが、推定に用いるソフトウェアの更新や分析の充実化に資する金融市場データの購入に充てる予定である。
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