研究課題/領域番号 |
20K01769
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西原 理 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (20456940)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ファイナンス / 金融工学 |
研究実績の概要 |
企業の実物投資・資金調達・倒産の問題について、以前は静学モデルで分析されることが多かったが、近年では動学的な確率モデルでタイミングや変動の問題を分析することが重要になっている。本研究では、新規的な理論モデルを開発・分析して、静学モデルでは分からなかった、企業活動の動学プロセスの解明を行ってきた。報告書の後半に記載したように、今年度は、2本の論文が国際的な査読付きジャーナルに掲載されている。 Nishihara (2020, Operations Research Letters) では、2つのレジュームの中で1つのレジュームでのみ投資可能という条件下で、企業の最適投資タイミングを分析した。最適解と価値関数を閉じた形の式で求めることができ、既存研究の結果を一般化することができた。この理論結果は、投資機会が非流動的な問題の分析に役立つと考えられる。 Nishihara, Shibata (2021, European Journal of Operational Research) では、資産の売却機会が非流動的な場合の企業の倒産プロセスを分析した。流動性が低くなると、企業は、倒産リスクを下げようと資産売却に積極的になるが、それでも、倒産確率は高まり、株式・負債・企業価値は下がることを示した。資産売却による株価の反応は、売却タイミングに非単調に依存することも示した。本論文は、当該ジャーナルのEditor’s Choice に選ばれたため、インパクトがあったと考えられる。 これら以外にも、企業の戦略的な資本構成最適化によって連鎖倒産が広がる仕組みを示した論文や、海外直接投資に関して理論と実証を行った国際共著論文などをジャーナルに投稿して、現在、審査中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規的な理論モデルを開発・分析して、静学モデルでは分からなかった、企業活動の動学プロセスの解明を行っている。研究成果については、概ね順調に、論文として結果が現れてきている。実際、今年度には、2本の論文が国際的な査読付きジャーナルに掲載された。そのほかにも、2本の論文が国際的な査読付きジャーナルで来年度に掲載予定(印刷中)であり、4本の論文が、国際的な査読付きジャーナルに投稿され審査中である。 当初、国内外の多くの学会に参加して研究発表を行う予定であったが、新型コロナの感染状況により、国内外の出張ができない状況になってしまった。インターネットで学会に参加したり、共同研究者とミーティングも行ったりもしているが、対面に比べてフィードバックを得るのが難しい状況になっている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、本研究プロジェクトは、概ね順調に進展しているので、基本的には、これまで通りのペースで研究を継続させ、論文という形にまとめていきたいと考えている。論文を国際トップレベルの査読付きジャーナルに掲載するためには、ジャーナルに投稿する前に、重要な国際学会で発表して、参加者の反応やフィードバックを生かして、論文を改善していくことが不可欠であると考えている。しかし、新型コロナの感染状況により、対面のミーティングができない状況が続いており、インターネットではフィードバックをそれほど得ることができない。感染状況が改善した場合には、次年度には、今年度できなかった分まで、なるべく多くの国際学会に対面で参加して発表を行っていきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、国内外の多くの学会に参加して、ジャーナルに投稿前の論文の研究発表を行う予定であった。これによって、関連する研究者から多くのフィードバックを得て論文の質を向上させていきたいと考えていた。しかし、新型コロナの感染状況により、多くの学会が中止になったり、規模を縮小してインターネットで行われたりすることとなった。さらに、感染状況の悪化により、国内外の出張が不可能になったりして、国内外の学会参加のために予定していた多額の旅費の使用が予定通りできずに、次年度使用額が生じてしまった。感染状況が改善した場合には、次年度には、今年度できなかった分まで、なるべく多くの国内外の学会に対面で参加して、旅費を使用したいと考えている。
|