研究課題/領域番号 |
20K01771
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 浩一 九州大学, 経済学研究院, 教授 (30380687)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | モデルリスク / 数理ファイナンス / 金融工学 / リスク管理 / リスク測度 / 金融派生商品 |
研究実績の概要 |
本年度は金融派生商品のリスクヘッジ問題の研究に重点的に取り組んだ. 1.金融派生商品のリスクヘッジ問題の研究:市場では,資産価格と金融派生商品価格に内包されるモデルのパラメータ(インプライドパラメータ)の情報を得ることができる.理論的にはモデルのパラメータは定数であるが,現実の市場ではインプライドパラメータの時間変動が観測される.インプライドパラメータの変動は,モデルの不完全性に起因する現象と解釈することができる.モデルを改善するためにインプライドパラメータの変動を加味することは可能であるが,改善には限界があり,完全なモデルを構築することは不可能である.本研究では,資産価格及びインプライドパラメータの完全なモデルは得られないことを前提として,金融派生商品の多期間ヘッジ問題の研究に取り組んだ.モデルと確率測度を同一視し,真のモデルの候補全体(多元的モデル集合)を確率測度の凸集合として表現した.この場合,単一モデルを前提として導出される完全ヘッジは不可能となるため,各期にヘッジ費用が発生する.このヘッジ費用の総和をヘッジ誤差と捉えて問題の解析を行った.研究成果の一部を国内研究会(金融工学・数理計量ファイナンスの諸問題2021)で公表した.研究成果の主な成果は以下の通り.(1)資産価格,インプライドパラメータが変動する市場を前提として,ヘッジ誤差を最小化する最適ヘッジ戦略の存在と一意性を示した.(2)最適ヘッジ戦略の効率的な数値計算方法を理論的に解析した. 2.数値計算手法の研究:多期間の金融派生商品の価格,リスク量の大部分の計算は,条件付き期待値の計算に帰着される.多元的モデル集合を前提とした場合,条件付き期待値の計算は従来の数値計算方法では計算量が膨大となるため,機械学習など新しい数値計算手法の適用可能性について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に沿って研究を行い,研究成果を国内研究会で発表することができた.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究を土台として,以下の研究に取り組む. 1.金融派生商品のリスクヘッジ問題 2.ポートフォリオ最適化問題 3.リスク量計測問題
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は新型コロナウィルスの世界的流行の影響により,海外に出張して国際会議に参加することが困難であった.このような国際情勢を鑑み,国内での研究に専念した.次年度以降,研究を発展させるために国際会議への参加を検討しており,そのための費用として計画的に予算を次年度以降に繰り越した.本年度は繰越金額を見込んで効率的に予算を活用しており,順調に研究を推進することができた. (計画)次年度以降,情報収集・研究成果発表のための研究集会参加費用,研究効率化のためのシステム整備費用に資金を活用する予定である.
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