研究実績の概要 |
本研究は、国際金融の諸問題(為替政策、資本自由化(規制)等)の因果効果を、因果推論の手法を用いて実証的に検証しようとするものである。もちろん、国際金融の諸問題については、これまでも多くの実証分析が行われてきた。しかし、それらの多くは、パネルデータ分析(固定効果モデル)等の手法を用いているため、厳密な意味で因果効果を推定していることになっていない。それに対して、本研究は、昨今、進展が著しい因果推論の手法を用いている点を特徴としている。 令和2年度は、大きく分けて三つのことを行った。まず、手法についてのサーベイである。上記でも述べた通り、因果推論の手法の進展は著しいものがある。例えば、Abadie et al.(2010)によって開発された合成コントロール法(Synthetic Control Method, SCM)については、Ben-Michael et al.(2020)が拡張された合成コントロール法(Augmented Synthetic Control Method, ASCM)を提示し、差の差分析(Difference-in-Differences, DID)についても、Sant'Anna and Zhao(2020)がDoubly robust difference-in-differences推定量を提示している。この他にも手法についての多くの進展があったので、R等で実装できる準備を行った。次に、江阪・藤井(2018a, 2018b)の拡張である。具体的には、SCMで分析を行っていたものを、ASCMで再度分析し直した。最後に、円買い・米ドル売り介入の分析に着手した。Esaka and Fujii(2019)では、米ドル買い・円売り介入の効果を分析していたが、それとは逆の為替介入の分析であり、当初計画通りである。
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