研究課題/領域番号 |
20K01774
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
伏屋 広隆 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (00422395)
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研究分担者 |
北村 智紀 東北学院大学, 経営学部, 教授 (80538041)
中里 宗敬 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (90207754)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 逐次取引モデル / ベイズ更新 / 情報カスケード / ミスプライス |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナウィルス感染拡大の影響により、参加を予定していた学会の中止、学会のオンライン化により、対面での活発な意見交換ができない環境となった。また、本研究の重要な要素である経済実験が行えないことで、新しい学習モデル、実験手法について、実験からの検証が出来ない厳しい状況が続いている。 そのような中で我々は、38回のオンラインミーティングを行い、他研究の逐次取引モデルの検証、学習システムの対象となる逐次取引モデルの拡張の可能性を検証、また、拡張したモデルのシミュレーションおよびその検証を行った。他研究では、高速取引は株価の価格形成に対してポジティブンな影響を与えているとの結果が多いが、他人の売買情報に基づく高速取引は価格形成を遅くすることを示唆する興味深い結果がシミュレーションからは伺えた。今後理論的な裏付け、経済実験の結果による裏付けが必要となってくる。 経済実験については、オンラインミーティングにおいてコロナ禍以前の実験結果を検証することが主となった。既存の実験で被験者が表明した確率について、低い確率の事象がある種の枝打ちのような形でより低く評価されているかの検証、また、それらのバイアスを組み入れた学習システムの構築を検討した。その一方で他研究の実験手法を検討し、より効率的な実験方法を模索した。 研究費については、経済実験が実施しにくい現在の状況では、経済実験は勿論のこと、学会の参加も効率的な使用とは考えにくいため、昨年度は使用せず、全額を今年度以降に繰り越させて頂くことに致しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)学習モデルの構築について、当初の逐次取引モデルに対する学習であるベイズ更新によるミスプライスの発生、成長、解消の数理的な定理、命題はほぼ完成してた。一方で、逐次取引モデルの拡張については、他人の売買情報に基づく取引をする投資家を組み込んだモデルを構成した。シミュレーション上は興味深い結果が出ているものの、それを裏付ける数理的な定理、命題の証明には至っていない。また、経済実験による検証も行えていない。 (B)数値シミュレーションについて、上記の既存のモデルを拡張した新しいモデルにおいて、ベイズ更新による学習システムのシミュレーションを行った。結果として他人の売買情報を用いる投資家による影響で、既存のモデルより価格の収束の遅れや不確実性の上昇が起きている状況が確認された。 (C)経済実験について、コロナ渦の影響でそもそも実験を行うことが難しい上に、仮に行えても密集を避けるために1回あたりの人数は抑えざるを得ず、また、実験時間を短くせざるを得ない状況であった。特に実験時間を短くすることについては、本研究の実験では実験システムの説明、被験者の理解に多くの時間を要するために、正味の実験時間の大幅な減少につながり効率を大きく悪化する。さらに被験者の集まりも悪いことが予想されることから、基本的に実験は見送り、2021年度以降に行うこととした。したがって、他研究の実験手法の検証、新しいモデルについての実験のデザインのみを行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、2020年度までに(A)学習モデルの構築、(B)数値シミュレーションが終わる予定であったが、コロナウィルス感染拡大の影響で、これらについて予備実験による検証を行うことが出来なかった。2021年度は状況が許せば、予備実験による検証をして必要であれば学習モデルを修正した上で(A)、(B)の完了とする予定であるが、状況次第では、現在のモデルをもって(A)、(B)の完了とする。 当初の計画では2021年度は(C)経済実験を主としていた。これに関しては、コロナウィルス感染拡大とそれを受けて大学がどういった対応をするか次第ではあるものの、出来るだけ年度前半に被験者の学習に対する予備実験を行い、本格的な実験のデザインの修正まで完了する予定である。その上で年度後半には、意思決定から2週間で実験を行える体制を整えて、機動的に出来るだけ多くの実験データを集め、年度内に学会発表まで行う予定である。 (D)実際の市場データによるパラメータ推定については、当初の予定では2021年度後半に始める予定ではあったが、(A)のモデルの修正をした場合、(C)の実験デザインを修正した場合は、当然パラメータ推定の手法も変わってくるため、現状では予定が立てづらい状態であるが、(A)や(C)の修正が不要な場合などは、可能であれば年度末に(D)を開始する予定である。 学会が中止になる場合もあり、論文の採択までに要する期間が伸びる場合もある状況下であるから、学会発表、論文投稿については、可能なものは研究計画を前倒しにして行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大の影響で、予定していた学会はオンライン開催となり、経済実験は行えない状況であった。したがって、2021年度の使用予定額の全額を2022年度に繰り越させて頂きます。
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