研究課題/領域番号 |
20K01777
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
小暮 厚之 東京経済大学, 経営学部, 教授 (80178251)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 介護リスク / 長寿リスク / 将来生命表 / ベイズ予測モデリング / 介護保険 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,公的介護保険データに基づいて介護状態に応じた将来生命表を構築し長寿リスク分析に応用することである.今年度(令和2年度)は研究期間の1年目に当たり,理論的な考察を中心に研究を遂行した.特に,要介護状態における死亡率変動の過分散を説明するために,ポアソン・ガンマ型の確率的死亡率モデルについて考察した.これは申請者が以前に提案したモデル("Mortality Forecasts for Long-Term Care Subpopulations with Longevity Risk: A Bayesian Approach", North American Actuarial Journal, 2021)の拡張であり,要介護度間の死亡率の差をより的確に表現できるものと期待している.また,複数の確率的死亡率モデルを統合するアプローチを考察した.その特別な場合として,年齢・期間モデルであるLee-Carterモデルとコーホート効果を持つCBDモデルを統合する有限混合モデリングを考察した.これは海外研究者との共同研究の成果であり,論文にまとめ専門誌に投稿した. 本報告書の「10.研究成果(令和2年度の研究成果)」に記入したように,本研究に関連して,講演2件,論文1件,書籍(翻訳)1件の成果を発表した.講演の1件は,長寿リスクとベイズ予測分布に関するものであり,日本保険年金リスク学会の会長就任講演である.また,論文は,長寿リスクにおける統計モデリングを論じたものであり,日本統計学会賞受賞者特別寄稿論文として発表したものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況が遅れている第一の理由は,新型コロナウイルス感染の拡大に伴って予想外の業務が発生し,十分な研究時間を確保できなかった事である.もうひとつの理由は,分析対象とするデータを変更した事である.研究計画の申請時点では,介護DBからの追加的なデータの取得を考えていたが,データ取得申請の準備を行うことができなかった.今後もデータ取得が実現できるか否か不確実なため,追加的なデータ取得を前提とせずに,現在公開されているデータを中心に研究を進めることとした.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の申請時点では,「介護保険総合データベース」(介護DB)からの追加的なデータの取得を考えていたが,今後データ取得が実現できるか否か不確実なため,追加的なデータ取得を前提とせずに,現在公開されているデータ(「要介護(要認定)者数」『介護保険事業調査』及び「要介護(要支援)状態区分別にみた年間継続受給者数の変化別割合」『介護給付費等実態調査』)を中心として研究を推める方針に変更する. データ分析のための計算環境を整え,ポアソン・ガンマ型の確率的死亡率モデルのベイズ推定を試みる.また,複数のモデルを混合するアプローチについても考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大のために海外における研究集会や調査が不可能となったことが主な理由である.また,ベイズ計算用に発注したPCも品切れのために入手できなかった.計算用PCについては,計算環境を見直して改めて新たな機器を発注する予定である.
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