研究課題/領域番号 |
20K01783
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中岡 孝剛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (50633822)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベンチマーキング分析 / 指向性距離関数 / 望ましくない産出 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,近年社会科学の分野で応用が進んでいるデータ包絡分析(Data Envelopment Analysis,DEA)を用いて,我が国銀行業の再編を定量的に評価することである. 本年では昨年度実施したDEAに関する理論論文と実証論文のサーベイ調査に基づく,準備ができたデータから分析を開始した.分析モデルの開発の前段階として,関連するDEAの理論論文のサーベイを行った.依然として信用組合のデータは準備段階であり,財務データと合併情報の整備がようやく終えれる段階である. 信用金庫のデータが未整備のため,再編の効果に関する検証はできていないが,地域銀行(地方銀行,第二地方銀行)と信用金庫を用いた生産性変化の分析や関連するベンチマーキング分析を実施することができた. ベンチマーキング分析では,地域銀行業における顧客との共通価値の創造の観点から,銀行業の私益性(私企業としての利益)と顧客貢献性(顧客企業の生産性)の関係について,望ましくない産出を含めた加重ラッセル型指向性距離関数モデルによって検証を行った.分析の結果,私益性と公益性は両立せず,相関関係が弱いことが明らかになった. この他,1998年から2019年までの地域銀行のデータを用いて,自己資本比率規制を課したもとで,長期的な生産性の変化を指向性距離関数を用いたDEAの手法を採用し測定を行った.その結果,我が国の地域銀行の生産性は,2000年代を中心に改善したのち,その後は大きな変化は生じていないことが明らかとなった.また,2000年代の生産性の改善には,望ましくない産出である不良債権の削減が大きく寄与していることが明らかになった. これらの分析結果は,学会や研究会で発表,ならびにディスカッションペーパーとして取りまとめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
依然として新型コロナウィルスの感染拡大によって,データ整備の学生アルバイトの確保ができず,データの整備が遅れている.しかし,整備が終了したデータを用いた分析を実施し,学会発表やディスカッションペーパーの発刊などを行うことができており,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究遂行方針としては,早々に信用組合のデータの整備の完了し,それを用いた地域金融機関の再編の効果の実証分析を行うことである.また,それを実施しつつも,最適な産業構造の分析に向けて,産業構造効率性分析(Industrial Structure Efficiency Analysis)の先行研究の整理を行い,分析モデルの検討を進める.この他,整理した先行研究をサーベイ論文として取りまとめ紀要論文等に投稿を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外出張や,データ入力の学生アルバイトの確保が困難となったため,次年度使用額が発生した.次年度については,すでに学生アルバイトも確保できており,効果的な研究費の支出を行っていきたい.また,英文校閲費など論文執筆に向けた支出として活用していく予定である.
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