研究課題/領域番号 |
20K01785
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
堀 敬一 関西学院大学, 経済学部, 教授 (50273561)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 企業金融 / 流動性 / コーポレートガバナンス |
研究実績の概要 |
2019年において流動性の指標の1つである回転率と総資産額で測った企業規模との間に正の相関関係があることを発見した。この成果を企業の現金保有の問題に応用して、青野幸平氏(立命館大学)との共同研究「Stock Price Reactions to Corporate Cash Holdings in Mitigating Predictable and Unpredictable Negative Shocks」に反映させた。この論文は2023年にPacific-Basin Finance Journalに公刊予定である。 この論文では、日本企業の財務データを用いて、キャッシュが企業にとって予測可能な、あるいは予測不可能なキャッシュフローの不利なショックをどのように緩和するのかについて検討した。その結果、(i)現金は株価にプラスの影響を与え、その影響は予測可能なショックの前には株価に十分に反映されること、(ii)予測できないショックの後には、財務的制約のある企業の現金の価値は制約のない企業のそれよりも大きいこと、(iii)制約のない企業では現金の価値は二つのショック間で同様であるが、予測できないショックでは制約のある企業の価値は予測したショックよりも大きくなること、がわかった。 ここで消費増税前後と、新型コロナウイルスの前後で企業規模が超過収益率に与えた影響が異なっている。消費増税の前後で規模が大きな企業ほど超過収益率が低いのは、株式の回転率が高いために流動性プレミアムが低くなることが影響していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の一部を国際的な査読付き学術雑誌に公刊された論文に反映させることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
コーポレートガバナンスの改革が、上場株式の流動性に与えた影響の直接的な分析は完結していない。しかしこの数年で、新型コロナウイルスによるパンデミックで市場を巡る環境が大きく変化したことと、東京証券取引所の改革で市場区分が変更になったことにより、分析の枠組みを見直す必要が生じてきた。こうした問題点を解決したうえで、未解決の問題に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、海外在住の共同研究者との作業が遅れていることや、国際学会での報告が難しくなったため旅費等の未使用額が発生した。次年度は海外での国際学会に参加する予定であることから旅費を支出する予定である。またiPhoneのような数値計算のためのディバイスの能力の低下が見られるので更新し、物品費として支出する予定である。
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