最終年度はコーポレートガバナンスと株式の流動性、そして現金保有との関係を、消費増税と新型コロナウイルスによるパンデミックの時期の日本企業のデータとイベントスタディの手法を用いて分析した。その結果、消費増税のように予測された負のショックに対して、企業が保有する現金は事後的には高い価値を持たないが、パンデミックのように予測不可能なショックに対して現金は高い価値を持つことを示した。こうした研究成果は「Stock price reactions to corporate cash holdings in mitigating predictable and unpredictable negative shocks」というタイトルでPacific-Basin Finance Journalに公刊された。 本研究課題は、パンデミックによる影響で1年間の延長期間を含む4年間研究活動が行われ上述の論文を含む2本の論文が公刊された。もう1つの論文は証券経済研究に公刊した「日本の株式市場の流動性-2000年以降のデータに基づく分析-」である。この論文では日本の株式市場における流動性の特徴を様々な指標を作成して分析した。そうした研究成果のより詳細な分析を試みたが、パンデミックにより株式市場の性格が大きく変化しただけでなく、国際的な共同研究の実施も困難になった。そこでこの研究で作成した流動性の指標を活用し、研究計画とは異なる視点で日本の株式市場を分析した結果、Pacific-Basin Finance Journalに公刊された研究成果を得ることとなった。
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