| 研究課題/領域番号 |
20K01788
|
|---|
| 研究機関 | 一橋大学 |
|---|
研究代表者 |
森 宜人 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10401671)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 余暇 / 都市ガバナンス / 20世紀都市 / トランスナショナル・ヒストリー / 歓喜力行団（KdF） / 厚生運動 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、トランスナショナル・ヒストリーとしての20世紀都市史研究の一環として、都市ガバナンスの視角からドイツの歓喜力行団（KdF）と日本の厚生運動の実態比較及び相互関係の考察を進めるとともに、両運動の形成を可能ならしめた歴史経路を明らかにし、両大戦間期の日独都市において余暇の組織化が共時的に展開され得たことの要因と、その社会経済史的意義を解明することにある。
この目的を達成するために、KdFについては、両大戦間期の余暇をめぐるトランスナショナル・ヒストリーのコンテクストにおけるKdFの位相に焦点をあてたD. Liebischerの研究および消費史の観点からKdFの再検討を試みたS. Baranowskiの研究を中心に近年の研究動向の把握につとめるとともに、ハンブルク国立図書館をはじめとする複数の図書館のデジタル史料の調査を行った。厚生運動については一橋大学附属図書館および同経済研究所附属社会科学統計情報研究センター資料室をはじめとする国内の大学図書館の所蔵史料および国立国会図書館のデータベースの調査を行い、日本厚生協会の機関誌『厚生の日本』の大部分および『東亜厚生大会記録誌』をはじめとする刊行史料のPDF化を進めた。
これら史料の整理・分析と並行して、2021年5月にオンラインで開催予定の社会経済史学会第90回全国大会において日欧比較都市史のパネルディスカッション（Towards a Transnational Urban History of Japan and Europe: Making of the 20th Century City as Parallel and Interlinked Phenomenon）を組織する準備を進めた。学会の審査をパスしたため、同セッションのなかでこれまでの研究成果の一部を報告することが決定した。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、上記の課題を解明するために、次の3つの視角を設定した：（1）KdFと厚生運動の人的交流を検証するとともに、日独の主要都市レベルにおける両運動の実態を網羅的に比較し、同質性と異質性を解明する。（2）「KdF都市」ハンブルクと「厚生運動の中心地」大阪の事例に即して、都市ガバナンス上の両運動の相違がもたらした帰結を解明する。（3）KdFと厚生運動の主に社会思想史上の歴史経路を把握し、両者が共時的に展開し得た因果性を明らかにする。
上記（1）～（3）の分析視角のうち、厚生運動の分析については、国内の刊行史料およびデータベースの調査によって当初必要と考えていた定性的ならびに定量的データの多くを得るとともに、さらに新たな史料を発見することができた。KdFについてはコロナ禍の影響によりドイツでの史料調査ができず、一部の資料をオンラインで閲覧・入手することができたものの、必要な史料を十分に収集することができなかった。
以上より、2020年度は当初設定した研究視角にそって研究を進める基礎をある程度固めることができたものの、ドイツでの史料調査を実施することができなかったことによる研究の遅れは否めない。
|
| 今後の研究の推進方策 |
2021年度の前半は、社会経済史学会での報告に備えて、引き続き2020年度の史料調査で収集してきた史料の整理・分析を行う。そして同学会で得られたフィードバックをもとに、報告原稿に加筆修正を施した論考の準備を進める。厚生運動については2020年度と同様の方針で史料調査を行うが、KdFについてはドイツでの史料調査実施の目途が立たない場合、引き続きオンラインでの史料調査を遂行するとともに、ドイツの古書ネットを通じてデジタル化されていない刊行史料を購入し、さらに研究の基礎を固める予定である。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりドイツでの史料調査を実施することが不可能だったため旅費として計上していた予算を執行することができなかった。2021年度にドイツでの史料調査が可能となればその旅費に充当するが、不可能だった場合はオンライン化されていない刊行史料の購入に充てたい。
|
