研究課題/領域番号 |
20K01788
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
森 宜人 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10401671)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 余暇 / 都市ガバナンス / 20世紀都市 / トランスナショナル・ヒストリー / 歓喜力行団(KdF) / 厚生運動 / 組織されたモダニティ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、トランスナショナル・ヒストリーとしての20世紀都市史研究の一環として、都市ガバナンスの視角からドイツの歓喜力行団(KdF)と日本の厚生運動の実態比較及び相互関係の考察を進めるとともに、両運動の形成を可能ならしめた歴史経路を明らかにし、両大戦間期の日独都市において余暇の組織化が共時的に展開され得たことの要因と、その社会経済史的意義を解明することにある。 2022年度はようやくドイツへの渡航が可能となったため、ハンブルク州立文書館およびハンブルク大学現代史研究所、ハンブルク州立図書館で史料調査を実施した。この調査により、主に1937年から1939年にかけて毎年ハンブルクで開催されたKdF全国大会の史料と、毎年の全国大会を含むKdFの多様なプログラムを通じて国内外からのインバウンド客に対応する過程で「KdF都市」としての地位を確立させていったハンブルク市の実態に関する史料を収集することができた。 これと並行して、これまで行ってきたハンブルクにおけるKdFプログラムと大阪における厚生運動の交流史・比較史分析を英語論文"From Hamburg to Osaka? Organising Leisure through Kraft durch Freude and Kosei Undo"として取りまとめた。また2022年9月にアントワープ大学で開催されたヨーロッパ都市史学会の国際大会において"Towrads a Transnational Urban History in Japan and Europe. Modernity and Governance"と題するパネル・セッションを組織し、各報告へのコメントおよびフロアとの討論を通じて、トランスナショナルな都市史のあり方について議論を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市ガバナンスの視角からKdFと厚生運動の実態比較および相互関係の考察を行った英語論文"From Hamburg to Osaka? Organising Leisure through Kraft durch Freude and Kosei Undo"の刊行によって、本研究の主課題の1つである、両大戦間期の日独都市において余暇の組織化が共時的に展開され得た歴史経路を明らかにすることができた。 したがって、本研究はまだ道半ばの状況にあるとはいえ、2022年度末までに当初設定した研究課題の約半分を達成することが出来たといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の前半は、2022年度の史料調査で収集してきた史料の整理・検証を行い、余暇の組織化が日独の都市社会に及ぼした影響を考察するための分析視角の基礎を固める。また8月に再びドイツに赴き、ハンブルクを中心に史料調査を行い、今後必要となる史料の補完を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により研究期間を延長したため次年度使用額が生じた。これらは主にドイツでの史料調査の旅費に用いる。
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