研究課題/領域番号 |
20K01791
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
ばん澤 歩 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90238238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済史 / ドイツ史 / 鉄道史 |
研究実績の概要 |
令和3(2021年)度は本科研の中間年である2年目にあたるが、引き続き新型コロナウィルス感染症の影響で予定していた海外渡航による史料調査や国内外での研究成果報告の予定変更(中止)があいついだ。2021年夏・22年冬に予定していたドイツ連邦共和国における史料調査を中止せざるを得なかったことで、学術的な報告ないしそれを発展させた論文の形での公表が遅れている点は遺憾である。 令和3年度中には以下の書籍を出版し、本科研を利用した成果を取り入れ、啓蒙書(新書)の形で、これまで蓄積してきたナチス・ドイツ期(20世紀前半)鉄道業を視座に据えたドイツ語圏経済史・経営史研究を総括し、あらためて問題を発見することができた。ばん澤歩『ナチスと鉄道』NHK新書(663)2021年 がこれにあたる。また、鉄道経営史研究会(代表 中村尚史東京大学教授)において、20世紀前半の在独(ベルリン)日本人鉄道職員(国鉄職員)の活動について2回(2021年6月、22年2月)の報告を行った。在独国鉄職員の活動の重要性についてはすでに認識が広く共有されているが、その実態については必ずしも明らかでなかったところ、本報告では日本側資料を基に、ある程度の概観を加えるとともに、明白ではなかった諸事実を確定できた。 また10月には内外のナチス・ドイツ経済史研究に関するサーヴェイをおこない現状の問題点をあきらかにするとともに、その打開の方向を議論した(これをもとに、論稿として『経済史研究』誌に掲載予定)。 また鉄道史学会全国大会(11月27日)の戦時鉄道輸送を扱う共通論題報告においては、日独比較史の立場からコメント(「日独比較の視点で:ナチス・ドイツ期鉄道輸送との対比で」)をおこなった。 以上の業績からドイツ(ドイツ語圏)の鉄道業の発展とその世界的影響について日独比較の視点を主にして明らかにする概観を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症対策が当初の予想以上に長引いた関係上、内外出張・史料調査が進んでいない。国内外の出張が自粛ないし原則禁止され、所定の現地資料調査をおこなうことができなかった、このため、すでに収集できていた史資料ならびにオンライン上で公開されている史資料や印刷物等を利用して研究をおこなったが、より詳しい資料の入手においては公的機関の利用も制限を受けた。 現在、国内で入手できる公刊資料を中心に研究を進めているが、綿密な調査分析の対象となるべき同時代資料についてはアクセスがやや遅れているため、研究全体も影響を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症による国外出張の制限は幸い緩和の傾向にあるが、本年に生じたウクライナ進攻の影響で欧州における史料調査の可能性については、なお不分明の部分がある。このため、本研究の課題である多国間比較の視点から、日本人鉄道職員に関する国内所蔵史料の発掘調査を進めることで、来るべきドイツ等における調査に備え、予備的調査を進めている。 具体的には、今後は旧国鉄資料の精査をおこない、当時の個々の国鉄職員に対する伝記的研究なども取り入れ、彼らの在外活動の実態をより一次史料に肉薄する形で明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症対策持続のため、令和3(2021)年度にも計画していた国内外の出張をともなう史料調査ならびに国外研究会への参加ができなかった。しかしながらこれらは研究計画遂行上必要であるため、同対策の緩和によりドイツでの史料調査が可能になり、なおかつ欧州情勢が渡航可能な状況にあれば直ちにこれを実施する必要がある。 したがって令和4(2022)年度には複数回ないしある程度以上まとまった期間のドイツにおける調査を行う用意がある。
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