研究課題/領域番号 |
20K01797
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
島西 智輝 東洋大学, 経済学部, 教授 (70434206)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 労働災害 / 安全衛生 / 炭鉱 / 石炭産業 / 労働 / 労働組合 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後日本の石炭産業を事例に、「生産第一、安全第二」の企業経営から「安全第一、生産第二」の企業経営への移行過程を検討するものである。本研究は、石炭産業の生産と安全の実態を解明し、石炭産業の歴史的評価に新たな知見をくわえるとともに、労働災害研究の発展にも貢献することが期待できる。 本年度は史料収集・分析とオーラル・ヒストリーの作成を計画していたが、新型コロナウイルス感染症対策に係る移動制限等のため、新規の一次史料収集とオーラル・ヒストリー作成が困難だった。そのため、本年度は収集済み史料や都内図書館等で収集可能な刊行資料を整理した。これらの資料整理に基づいて、今年度は労働安全衛生対策の面から「生産第一、安全第二」の企業経営の実態を検討する論文を刊行した。当該論文で明らかにしたことは、以下の3点である。 第1に、1960年代に生産能率と災害率がともに上昇する「生産第一主義」の時期があったことである。第2に、誘導無線装置やCOマスクなど、予防保安設備への設備投資が後回しになっていたことである。第3に、重大災害の事例を分析し、経営者の「生産第一主義」だけでなく、現場の労働規律が弛緩していたことが、災害発生の背景のひとつであったことである。 上記は、事例研究であることから一般化には慎重になる必要はあるが、「生産第一、安全第二」の要因を経営者側の人命軽視・過失に求める場合が多かった先行研究に対して、新たな解釈を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は既収集史料等の分析によって研究の進捗を実現できたものの、新型コロナウイルス感染症対策に係る移動制限等のため、当初計画にあった新規の一次史料収集とオーラル・ヒストリー作成が困難だったため。
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今後の研究の推進方策 |
移動制限等を踏まえ、移動可能な範囲での一次史料収集へと方針を変更する。オーラル・ヒストリー作成については、ウェブ会議システムの活用を考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度実施予定だった史料調査・収集のための国内出張旅費支出、およびオーラル・ヒストリー作成のための録音文字起こし委託費の支出が行われなかったため。 本年度は、移動制限範囲内での史料調査・収集を行うとともに、新型コロナウイルス感染症による移動制限の緩和状況を踏まえつつ、上記支出を行っていく計画である。
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