研究課題/領域番号 |
20K01803
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
鈴木 邦夫 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 名誉教授 (50132783)
|
研究分担者 |
大石 直樹 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (00451732)
大島 久幸 高千穂大学, 経営学部, 教授 (40327995)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 総合商社 / 三井物産 / 三菱商事 / 大倉商事 / 一手販売契約 / 一手買付契約 / 代理店契約 / 信用供与 |
研究実績の概要 |
戦前の総合商社(三井物産・三菱商事・大倉商事など)は、組織(経営管理組織と営業組織)の構造、商品取引の制度(ルール)、人事制度(昇進・昇給)など独特な諸制度を作っただけでなく、これらの諸制度が複合的に作用することで生まれる次の仕組みを作り上げた。この仕組みは、メーカーが総合商社に依存せざるをえなくなる仕組みである。仕組みは、製品販売の側面、原料買付の側面で、それぞれ①から⑦まである。 今年度において、製品販売面では、1930年代の大倉商事によるオーストラリア市場での電極(日本の東海電極製造)の市場開拓の分析(主に⑤世界各地の販売市場での情報を収集する仕組み、⑥最初はかなりの費用を要する新規販売市場を開拓する仕組みに関わるもの)、欧米メーカーとの日本市場での代理店契約の分析(主に、⑥新規販売市場を開拓する仕組みに関わるもの)、1890年代から1900年代の三井物産による石炭・綿糸など多数の商品についての一手販売(あるいは委託販売)契約の分析(主に④メーカーに対して設備資金を迅速に融資する仕組み、商品販売代金を前貸しする仕組みに関わるもの)をおこなった。 原料買付の側面では、1900年代における三井物産による鐘淵紡績など紡績会社との原料綿花供給契約や、摂津製油との原料菜種供給契約の分析(①仕入費用を削減し、しかも極端に低いマージンで商品取引を行う仕組み、④メーカーに代わって在庫を保有し、メーカーへの原料供給代金を売掛けとすることで、メーカーの金融的負担を軽減する仕組みに関わるもの)をおこなった。 また、日本メーカーが外国メーカーと技術・資本提携契約をおこなう場合、総合商社を仲介すると円滑に締結できる。その例として、1900年代における芝浦製作所と米国ゼネラル・エレクトリックとの提携契約の際の三井物産の役割を分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、大量に資料を収集することが不可欠である。ところが、コロナウイルスの蔓延のため、予定していた米国国立公文書館での資料調査(在米日本商社の支店資料の調査)をおこなえなかった。米国国立公文書館は最重要の資料収集予定先であるため、研究計画に遅れを生じている。 しかし、在豪日本商社の支店資料については、オーストラリア政府から日本政府に返還(寄贈)されているので、これを所蔵している国立公文書館つくば分館に出張して資料収集(三井物産、三菱商事、大倉商事)をおこなうことができた。また、三井文庫で三井物産の本店関係資料、三菱史料館で三菱商事の本店関係資料の収集をおこなった。 毎月、インターネットを使って研究会を開催した。研究会では、各人が収集した資料の内容を紹介し、資料を分析した結果を報告した。分析した仕組みは、「研究業績の概要」欄に記したように、製品販売面では、①から⑦のうち、主に④・⑤・⑥、原料買付面では①から⑦のうち、主に①・④である。 なお、製品販売面での①(販売費用の低減と低マージンでの取引を行う仕組み)、②(販売代金回収不能というリスクを負担する仕組み)、③(買約定リスク不履行というリスクを負担する仕組み)、⑦(取引先とのトラブルを処理する仕組み)や、原料買付面での②(国際相場商品の場合、原料の価格変動リスクを負担する仕組み)、③(価格高騰などのために原料仕入先が原料を引き渡さない売約定リスクを総合商社が負担する仕組み)、⑤(世界各地での仕入市場の情報を収集する仕組み)、⑥(新規の仕入市場を開拓する仕組み)、⑦(取引先との間で発生するトラブルを処理する仕組み)の分析は次年度以降におこなう予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
米国国立公文書館での資料調査は、コロナウイルス蔓延のため、2021年度も実施困難と思われる。同館での資料調査は2022年度から開始する予定である。 このため2021年度は、オーストラリア政府からの返還資料と三井文庫が所蔵する三井物産本店資料、三菱史料館が所蔵する三菱商事本店資料を収集し、これを分析する作業をおこなう。 どのような仕組みについて2021年度に分析するかについては、どのような資料が収集できるかにかかっている。研究代表者・研究代表者がそれぞれどの仕組みにするか狙いを定めて資料を収集し、研究会で収集資料の内容の紹介と資料の分析結果を報告し、議論をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者および2人の研究分担者が、米国国立公文書館での資料調査と収集を予定していた。しかし、コロナ・ウイルスの蔓延のため、一人も米国へ渡航できず、同館での資料調査と収集を実施することができなかった。そのため多額の次年度使用額が生じた。できれば2021年度に同館へ出張したい。しかし、コロナ・ウイルスが終息しない場合には、2022年度に、複数回、同館へ出張するつもりである。
|