研究実績の概要 |
近年、当該分野で大きな研究動向の変化が欧米で進行している。それを受けて、2022年度以降、全体的な研究動向を見直すため以下のような研究をおこなってきた。 まず2022年度には、Research Paper Series No. 33 米山 秀「近世イギリス徒弟制研究の現状と課題」2022,により、21世紀初頭の時期に研究動向の大きな変化が起こる直接的政治状況などを紹介した。続く2023年度には、Research Paper Series No. 47米山 秀「イギリスにおけるギルドの衰退とエクセタ縮絨工カンパニの変質」で我が国における徒弟制研究の研究動向を整理した。これは、本来Yoneyma ,Decline of Guilds and their monopoly in English provincial towns, with particular reference to Exeter, Urban History, Vol.46, 2019の一部に当たるもので、論文審査の際、審査委員が読めない(日本語)文献を利用しているという理由で削除を指示された部分に相当する。 さらに、今年度末にこれらの総括として、「徒弟制とギルド--イギリス産業革命の一つの前提--」を学会誌に投稿中である。わが国では、従来、ギルドや徒弟法(1563年)のもとにおける17世紀以前の一部都市の徒弟制の特徴を前提に、徒弟制をもっぱら資格制限の制度とみなしてきた。しかし18世紀イギリスではギルドが衰退する一方、徒弟制が興隆していた。こうした徒弟制はギルドの下の資格制限とは言えず、この徒弟制こそ産業革命の新たな技術革新を生み出した制度であることを指摘している。 具体的には、ハンフリーズとモキアというわが国でも周知の二人の産業革命論者の相違に焦点を当て、両者の相違を見る。そのうえで、サウサンプトンとエクセタというギルド状況が異なる都市の歴史の中で、二人の議論を検証している。こうした中でモキアなどに代表される近年の小分岐論としてのイギリス産業革命論を歴史具体的に跡付けている。
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