研究課題/領域番号 |
20K01811
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
川分 圭子 京都府立大学, 文学部, 教授 (20259419)
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研究分担者 |
堀内 真由美 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60449832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イギリス / 近代史 / 現代史 / 砂糖貿易 / 砂糖生産 / カリブ / 砂糖生産技術 |
研究実績の概要 |
昨年度に続き、この科研課題と以前の科研課題を縦断する内容で、一般書出版の企画を進め、9月編著者として『エリア・スタディーズ197 カリブの旧イギリス領を知るための60章』明石書店を出版した。この書籍の出版のため、共同執筆者の全初校・2校・念校・図版などの編者校正を行い、また出版社編集者校正の確認を行い、このために全共同執筆者との連絡、共同編者との随時の連絡や対面での校正の確認、出版社との打ち合わせを繰り返し行い、章、部の構成の見直しなども行った。 次に2023年8月19-28日、トリニダード・トバゴおよびガイアナに在外研究を実施した。トリニダード・トバゴでは、西インド大学セント・オーガスティン校図書館の訪問調査を行った。また駐トリニダード・トバゴ大使を訪問、大使、大使館職員に対して同行の堀内真由美愛知教育大学准教授とともに講演を行った(講演題目「トリニダードの砂糖生産の盛衰と社会の変容―19世紀後半から現代」)。ガイアナでは、19世紀の砂糖プランテーション・工場で現在ガイスコに継承されている工場で現在稼働中のもの、また数年前に稼働を中止され宅地などに分譲されつつあるプランテーション・工場跡地を探査した。 国内でも、京都大学桂図書館、龍谷大学図書館、大阪公立大学杉本キャンパス情報センターで、19世紀末から20世紀にかけての砂糖生産技術に関する書籍、雑誌の調査を行った。これら文献調査については、大学の通常の教育・研究と重なる部分が多いため、旅費・資料コピー代金の多くは大学研究費で支出した。 以上2023年度はかなり活動できたが、コロナの時期に活動できなかったため基金に余剰があるため、研究期間を2024年度まで1年延長した。そこで2024年度第74回日本西洋史学会大会の個別報告を申し込み、受理され、現在その報告に向けて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本社会ではカリブ地域というと、旧スペイン領のイメージが強く、旧イギリス領のカリブ、英語圏のカリブ、という視点からこの世界を見ることはほとんど行われてこなかった。それに対して、「カリブの旧イギリス領」という枠組みで、定評ある地域研究のシリーズから、書籍を出版することができたことは、研究成果の社会還元として重要な意味があった。 また、カリブの日本大使館において、研究分担者とともに報告を行い、大使館員とも交流を深めることで、日本西洋史学界におけるカリブ研究の現状を外交関係者に直接伝えることができた。また現代の日本とカリブ諸国の関係に考察を展開しつつ、歴史学研究を進めるための視座を得ることができた。同大使館では、他の日本人カリブ研究者とも交流を行い、帰国後も「日・カリブ交流年2024」の行事や取り組みの検討などで交流を続けている。 次に、歴史学としてさらに専門的な研究を進めるため、在外研究と国内調査を行い、次の研究報告に向けて準備を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年5月19日の日本西洋史学会大会において、「植民地の産業革命―イギリス領カリブにおける製糖技術革新と社会的影響」と題する自由論題報告を行う予定である。そのため、2023年度に収集した資料を現在読み進めている。この報告後は、報告の質疑から得られた示唆をもとに、研究をさらに進め、論文を執筆する。 2024年度はこの研究の延長期間であり、基金の残額は少なく、在外研究は行わないが、研究成果のまとめに入る必要があり、これまで4年間の報告や論文を見直し、報告のみで論文執筆に至らなかった研究を再考し、論文執筆、あるいは書籍の出版に向けて、準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、外国地域研究であるにもかかわらず、最初の3年間がコロナと重なってしまい、研究が進められなかった。2023年度からようやく在外研究を行い、それによって新たな発見や知見を得たので、それを基盤に2024年度も研究を展開したいと考えている。また、2024年度を最終年度としたいため、学会報告・論文執筆に係る費用、あるいは書籍の執筆のための出版社との打ち合わせや学術図書への応募などにかかわる執筆・印刷費用などが予定される。成果をまとめるために、より一層の先行研究の網羅や把握も必要であり、書籍の購入費も必要である。また研究分担者にも同様の事情が生じているため、分担者への配分も計画している。
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