研究課題/領域番号 |
20K01813
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
小西 恵美 専修大学, 経済学部, 教授 (90338583)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 19世紀イギリス / ハイ・ストリート / 買い物通り / ベリ・セント・エドマンズ |
研究実績の概要 |
ベリ・セント・エドマンズとノッティンガム、イプスウィッチの買い物通り分析を進めるために、人名録とセンサス情報の他に、数紙の新聞に掲載されている広告にあたり、分析のための情報を増やした。数都市の比較研究を行うにあたり、共通の情報が蓄積されたデータベース作りは本研究の基本となる。加えて、19世紀前半から半ばの人名録とセンサスのデータをもとにして、ハイ・ストリートの店舗分布地図を作成した。 データベースの構築を行う中、その一部のデータをもとにして、ベリ・セント・エドマンズのハイ・ストリートの人名録の分析を主たるテーマとした研究成果を掲載をした。「ベリ・セント・エドマンズのハイ・ストリート―1830~1869年の人名録の分析から―」『専修大学人文科学研究所月報』311号(2021.3)。ハイ・ストリートの特徴は一般的な共通理解はあるものの、その実証した研究はない。本稿ではデータに基づきそれらを検証し、その理解の大筋を実証するとともに、さらなる分析が必要とされる箇所を指摘した。一都市における買い物通りの詳細研究は、社会経済史だけでなく、商業史、マーケティングの研究者にとっても、新しい情報を提示できたと思う。 本稿では、従来、目を配られていなかったハイ・ストリート以外の買い物通りも分析対象とした。これらから、19世紀前半から半ば(1830年~1870年)のイギリス地方都市における、重層的な買い物通りの構成を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データベース構築作業と成果報告(論文)に関してはほぼ、計画通りに進んでいるが、次年度以降に予定している海外研究協力者の招聘に関しては、まったく見通しが立たない。元々の計画では1年目にかなり踏み込んだ計画をたてるつもりであったが、コロナ禍の中、もうしばらく様子を見る必要があるし、当初の4年間という全体計画の延長も考えなくてはいけないかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、昨年同様に、データベース構築を継続的に進めていく。センサスや人名録のデータ入力は、単純作業なので、学生アルバイトを使うことにメリットがある。また、当時の通りの様子を視覚でとらえるために、そのデータをもとに、買い物通りの店舗地図の作成を行う。そうすることで、都市全体における店舗の分布と、各通りにおける店舗の分布・集中が明らかになるだろう。 しかし、本年度は新聞広告を中心とした分析に力を入れたい。作業には長い時間がかかるが、可能であれば一つの都市につき数紙当たり、対象期間も長くすると、商業空間の変化がより鮮明になると思われる。まずは、3月に発表した人名録を中心としたベリ・セント・エドマンズの分析に合わせ、新聞広告を通したハイ・ストリート分析を加えた研究成果を論文の形でまとめる予定である。また、10月頃には別の科研(基盤B、山本千映代表)での研究会報告が予定されているので、その内容をそこで話すつもりである。その他、小さめの研究会で今までの成果を報告したい。 海外研究者(マンチェスターメトロポリタン大学のジョン・ストバート教授)の招聘に関する打ち合わせも進める。コロナの状況を見ながら日本に来てもらう計画も進めるが、その前に、まずはオンライン研究会を開催するところから始めることも考えている。 同様、私が渡英することも、今年度、次年度は難しいと思われるので、オンラインでアクセスできる資料を調査する必要がある。店舗や通りの情報を含む資料には、センサス、人名録、新聞広告に加え、地図が重要である。ベリ・セント・エドマンズの地図は、古代・中世から現代に至るまでのいくつもの地図を地方史家がホームページにアップしてくれているが、他の都市では様々なソースから集める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で計画が大きく変わった。研究調査や研究会報告のために国内出張をすることはできなくなったこと、海外研究協力者を日本に招聘する計画の見通しがたたず、ストップしてしまったことから、それに関連する支出もなくなったことがあげられる。データ入力等の学生アルバイトも、学生を研究室で作業をさせられないことから、作業に制約がでてきていしまったことなどが、支出減の要因である。 海外研究者の招聘や資料調査のための国内出張、海外出張に関しては今年度も見通しがきかない場合は、計画全体を1年延長することも視野に入れ、無理な資金の使い方をしないつもりである。また、現地での史料調査の代わりに、オンラインデータベースを積極的に使うため、その使用料は当初より増額する見込みである。
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