研究課題/領域番号 |
20K01823
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 健太 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (70507201)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特許 / イノベーション / 新技術分野 / IPC / 特許分類 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本への特許出願のIPC分類を分析することで、当該技術分野の専門家に拠らず、比較的簡便な方法で新技術分野を識別する手法を検討している。2021年度は、データセットの構築にかなりの時間を費やした。研究実施計画で予定していた分析については、2022年度に実施する。データセットの構築と並行して、Fleming(Management Science, 2001)等で採用されている方法、すなわち特許分類の共起関係に着目して新技術分野を特定する方法を試行し、当該手法について課題・留意点を確認したので、以下に概要を記す。
(1)特許分類のレベル:IPCの共起関係を利用した方法では、サブクラス・レベルの特許分類を観測単位として新規の組み合わせを検索することが多い。しかし、この方法の妥当性については、必ずしも十分な検討がなされているとはいえない。 (2)参照期間:特許分類の新規の組み合わせを判別するための参照期間(既存技術のプール)を長く設定すれば、後の出願に付与される特許分類の組み合わせが既出である確率が高まる。つまり、新規の組み合わせの検出率は低下する。他方で、参照期間を長く設定すると、既存技術とは関連が希薄な新技術について、誤って既存分野であると判定する可能性がある。 (3)閾値の設定:新規の組み合わせの中には、「偶然の組み合わせ」と「真に新規の技術分野である場合」の両方が含まれると推測される。したがって、前者を排除するためには、組み合わせの新規性に加えて、一定期間の出願件数等について制約を課すことが適当である。ただし、適切な閾値がどこにあるのかについては、明らかではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
検索IPCの生成過程及び更新ルールの解明が不十分であり、2022年度も引き続き作業を要するため、「遅れている」と判断した。コロナ禍により、実務家の協力が得にくかったこと、予定していたリサーチ・アシスタントが渡日できなかったことなどが影響している。
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今後の研究の推進方策 |
特許出願が既存技術分野と新技術分野のどちらに属するかを表すダミー変数を従属変数とし、各種書誌情報を説明変数に用いた回帰分析を行い、新技術分野と相関する要因を特定する。
新技術分野の特定方法については、各特許出願に関する「検索IPC」の情報を用いる。検索IPCでは、新技術の登場に起因してIPCの分類体系に新たな技術分類が追加された場合、その分類に合わせて過去の特許分類を見直し、IPCの再配置が行われる。したがって、分類の新設によってIPCの再配置が行われた特許群のうち、出願が初期のものは、その分類の発展に係る萌芽的な発明を含む可能性があり、元々のIPC分類から派生した、新たな技術分野に属する特許だと見なすことができる。上の回帰分析において、新技術分野に対して有意な説明力を持つ変数を抜き出し、新技術分野の識別モデルとする。
次に、識別モデルに各説明変数(書誌情報)の値及び上で得られたパラメータの値を代入することにより、未知の特許について新技術分野に属する確率が計算できる。また、モデルの利用例として、新技術分野の出願が増加しているIPCの特定などを行い、企業の研究開発、知財戦略、政府のイノベーション促進策の基礎資料となる集計を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】コロナ禍により、国内出張・海外出張ができなかった。また、予定していたリサーチ・アシスタントが渡日できず、雇用を見送った。 【使用計画】移動制限が解除された後、出張を行う。上記リサーチ・アシスタントは2022年4月に来日できたため、今後雇用を予定している。
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