研究課題/領域番号 |
20K01831
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
林 正 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (50434270)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 経営学 / 国際経営 / 海外子会社 / 立地選択 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、集積の経済性と国際的接続性の視点から、多様な活動を行う海外子会社の立地選択の決定要因を明らかにすることである。2020年度は、どのような状況において企業の海外子会社は高い国際的接続性に特徴づけられるグローバルシティに立地するのかという問題について、国際経営論や経済地理学における先行研究の広範なサーベイを実施し、定量的分析に用いるデータの作成に取り組んだ。GaWCによって測定された専門サービス企業の都市間のネットワークとグローバルシティのリスト、そして東洋経済新報社が記録した日本企業の海外子会社のデータを用いて、グローバルシティに立地する海外子会社の特定を行った。また、それらのデータと各国の公式的および非公式的な制度環境に関するデータを統合し、企業が海外子会社の立地選択においてグローバルシティを選択する要因について定量的分析を行った。分析の結果、企業は水平型直接投資の目的を持つ海外子会社の立地選択において、グローバルシティを選択する傾向が示された。一方、垂直型直接投資の目的を持つ海外子会社の立地選択では、グローバルシティではない場所を選択する傾向が見いだされた。さらに、ホスト国の経済的自由が低いほど、企業が水平型直接投資の目的を持つ海外子会社をグローバルシティに立地する傾向は強まること、そしてホスト国の社会的開放性が低いほど、企業が垂直型直接投資の目的を持つ海外子会社をグローバルシティ以外の場所に立地する傾向は弱まることが見いだされた。今後は、国際的接続性に加えて、都市間の地域特化の経済性や都市化の経済性の違いに焦点を当てたデータセットの作成を進め、郊外都市を選択対象に含む海外子会社の立地選択の分析を実施することを計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外子会社の住所と活動や各国の都市の特徴に関するデータの収集と統合には当初の予想を上回る時間が必要とされた。これらの作業は現在も継続中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は主に3つの研究作業を進める。まず、(1)2020度に作成を進めた各都市の国際的接続性と都市が属する地域の集積の経済性に関するデータの整備を継続する。このデータの整備が進めば、各都市の地域特化と都市化の経済性、および国際的接続性が持つ海外子会社の立地選択に対する影響の比較が可能になると考えられる。また、(2)海外子会社の活動の多様性を把握するためのコードの作成を進める。この作業は海外子会社の活動に注目する先行研究の網羅的なサーベイが必要とされるものの、本研究の目的である多様な活動を行う海外子会社の立地選択の決定要因を明らかにする上で重要な意味を持つ。さらに、(3)日本企業の海外子会社の詳細な立地のパターンを調べるため、各子会社の住所の緯度と経度を特定し、各都市の中心部からの物理的距離を計測する。各海外子会社の住所を国際的接続性が高いグローバルシティとその周辺にあたる地域、それ以外の都市に分類する。この分類により、都市の国際的接続性の高低と海外子会社の活動の適合関係に関する実証分析が行えるようになる。地理情報システムを利用することで、海外子会社の細かな立地のパターンに関する知見を深めることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実証分析のためのデータの整備には当初の予想を上回る時間が必要とされ、分析を開始する時期や学会発表の申し込みが遅れてしまった。次年度に必要となるのは、主に先行研究の網羅的サーベイと分析を進めるための図書・資料や研究成果の発表を目的とした国内外の学会参加の費用である。
|