研究課題/領域番号 |
20K01837
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研究機関 | 横浜商科大学 |
研究代表者 |
大西 純 横浜商科大学, 商学部, 教授 (60447109)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 在アジア日系企業マネジメント / 異文化間職場摩擦 / 国文化 / タイ、ベトナム進出日系企業の人事管理 |
研究実績の概要 |
今研究は在アジア日系企業における現地人従業員と日本人管理職間の異文化間職場摩擦の防止または減少により、より効果的な人的資源管理手法を提案するものである。アジア進出の日系企業にとって、現地人管理職の確保は重要課題であり、異文化間の職場摩擦はこの問題に悪影響を与えている。今研究では、日系企業の異文化間職場摩擦を異文化要因と進出国要因とに区別し、それぞれの解消策に沿った、働く動機付け、リーダーシップ、職場教育、コミュニケーション法等の経営手法を提案するものである。在アジア日系企業にとって新製品開発、コストダウン等による競争力の確保には既に限界が来ており、人的資源の有効活用、特に日本人と現地人の協働効率を上げることによる経営力強化が喫緊の課題となっている。 国際協力銀行が行ったわが国製造業企業の海外事業展開に関する2019年度調査報告(海外に3社以上現地法人を持つ企業約450社が回答)で今後とも事業展開を積極的に行っていく国として1位中国、2位インド、3位タイ、4位ベトナム、5位インドネシアが挙げられており、今後ともアジア重視を日系企業は明確にしている。2019年度の調査結果の特徴としては、中期的な事業展開有望国の順位が大きく変動しておらず。第1位に中国が選ばれ、2位にインドが選ばれている。しかしながら上位5カ国のうち東南アジアに位置する国が3カ国含まれており、東南アジア諸国の重要性が高まっていると言える(JEBIC2018)。しかしながら、これらの国々の日系企業は従業員の早期退職、人件費の高騰等人的資源管理上、多くの問題を抱えており特に管理職クラスの現地人材確保の難しさが大きな課題となっている(JEBIC 2018)。在東南アジア日系企業で管理職クラスの現地人が育たない理由として日系企業の平均的賃金が安いという事のほかに現地人と日本人管理職との職場摩擦が挙げられている(Holmes 1995, 大西2006、2009、2010、白木2010、関2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度はタイ・ベトナムに出張し前年までに終了した現地調査に基づき在アジア日系企業の日本人管理職と現地人従業員間に発生する職場摩擦の防止策を現地で検証する予定であったが,COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の蔓延のため海外渡航ができなくなり現地調査ができないまま現在に至っている。国内でできる作業として過去の調査結果を見直し且つSPSSに再インプットを行い、調査結果の歪み等を修正のうえ統計手法を使って再分析を行った。調査項目には職場摩擦に対する対処の違い、国文化の違い、働く動機付けの違い、日本的経営手法と現地経営手法の違い、コミュニケーション方法の違い、職場教育の違い、人事制度・職場環境の違いと多岐にわたっていたが、働く動機付けとコミュニケーションの違い再分析結果には過去の調査結果と誤差が出たので原因を確認の上修正し、次回現地調査での質問事項の内容も変更した。またタイとベトナムでの面談時に現地人従業員に提示する質問も現地で通訳を手配する予定ではあるが一応タイ語とベトナム語に翻訳をした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はタイ・ベトナムに出張し前年までに終了した現地調査に基づき在アジア日系企業の日本人管理職と現地人従業員間に発生する職場摩擦の防止策を現地で検証する予定であり、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の蔓延終息の見通しが立ち次第、現地調査を実施したい。ただ現時点での問題点は在タイ、ベトナム日系企業の現地従業員面談には当該企業の管理職の許可を得なければならずこちらがいつ訪問できるか明確にできない現状では面談予約が取れない点である。これらの面談と並行して現地の経営学の教員に異文化間の職場摩擦防止策の有効性について面談する予定であるがこちらはタイのマヒドン大学、カセサート大学の教員に内諾を得ている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の蔓延のため計画していたタイ、ベトナムでの在日系企業従業員の面談が行うことができず2020年度は過去の調査データの再分析を行うのみとなった。2021年度は新型コロナ感染症のある程度収まった場合は各国の外国人の受け入れ状況にもよるが持ち越された予算を使用して調査出張に赴きたい。
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