本研究の主たる目的は、公務員の職務認識や政策認識のメカニズムを解明することである。最終目的として公正世界信念と公務員の政策認識の関係の解明を目指し研究を行った。2020年度から2022年度までの研究において重要な貢献は以下の2点である。第一に、本研究の研究課題の1つである「公務員の職務意欲と職務認識」に関する分析として、「公務員の職務上のミスに対する認識」の要因分析を行った。分析の結果、行政の職務上のミスに対する認識は、労働者個人の公的活動の意欲(PSM)の高低ではなく、労働者が所属するセクターの違いと関連していることが明らかになった。これらの研究成果は論文にまとめ、「行政の職務上のミスに対する労働者の認識に関する実証分析」として発表した。第二の貢献は、研究課題の2つ目「公務員の公正世界信念と職務認識」に関する分析として、公務員の公正世界信念と告発意欲に関するモデルを検証したことである。分析の結果、公正世界信念が高い個人ほど告発の意欲が低いことを示す結果が得られた。また、PSMが高い個人ほど告発の意欲が高いことが明らかになった。これらの分析結果は論文にまとめ、「公務員の告発意欲 ― Public Service Motivation と公正世界信念は告発意欲と相関するか? ―」というタイトルで発表した。最終年度である2023年度の重要な貢献は、公務員の政策認識と公正世界信念の関係を検証したことである。具体的にはタイプの異なる政策に対する認識や態度と公正世界信念の関係について実証分析を行った。分析の結果は、2023年日本行政学会研究会(2023年5月13日)の分科会B 「PSM研究の最前線」において「公務員のPSM(Public Service Motivation)と政策認識の関連分析」というタイトルで発表した。
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