研究課題/領域番号 |
20K01840
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
久村 恵子 南山大学, 総合政策学部, 教授 (60350732)
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研究分担者 |
山口 和代 南山大学, 総合政策学部, 教授 (60387735)
大塚 弥生 南山大学, 法学部, 准教授 (40233184)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外国人留学生 / 職場適応 / 感情作業 / 感情管理 / 感情労働 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の職場への元留学生の適応プロセスを人間関係の構築と維持の側面から捉え、その際の感情作業と感情管理を明らかにすることにより、元留学生の職場適応の困難性と健全性を検証することを目的とし、2つの研究課題を設定、調査・研究を進めてきている。 2022年度は、2020年度の面接調査で得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき、第1の研究課題「留学生が大学時代に習得する感情規則および表出規則の解明」として、留学生活で体験した「感情作業」や「感情管理」はもちろんのこと、それらの「学習過程」などについての分析を進めてきた。特に、本研究課題の最初の成果として、個人の「認知」と「感情作業・感情管理」の関係性について公表できるよう準備を進めている。 さらに、第2の研究課題「元留学生の職場内外の人間関係構築および維持における感情作業と感情管理の解明」に向け、2022年3月より外国人元留学生および日本人元学生に対しオンラインによる質問紙調査(Googleフォームを使用)および面接調査(Zoom使用)を進めてきた。申請時では、調査対象者として外国人元留学生および日本人元学生の各々10名(計20名)を計画していたが、性別・国籍などの構成を考慮し、各々12名(計24名)へと変更し、これらの調査を2022年10月末までで全て終了させた。そして、2023年3月末時点で、第2研究課題の面接調査で得られた音声情報は1件分を除き、テキストデータへの変換作業を終わらせ、質問紙調査から得た数量データとのマッチング作業も終了し、分析のためのデーターベースのフレームワークを完成させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第1研究の面接調査はコロナ禍の影響で調査対象となる留学生の来日日程や面接方法の調整に時間を要したため、分析作業も当初の計画よりずれ込み、第2研究の準備も当初の計画より3か月程遅れた。さらに、第2研究の質問紙および面接調査の実施についても、コロナ禍の状況において調査協力者との日程調整が順調に進まず、当初、面接調査の開始時期を2021年秋頃と予定していたが2022年3月となり、終了予定も当初の2022年夏までの予定が、10月末までにずれ込み、こちらも3か月ほどの遅れが出た。また、音声情報をテキストデータへと変換するための人員が確保できず時間を要したため、変換作業を外注し、対処することにした。その結果、2023年3月末時点では、1件分の音声データを除き、すべてテキストデータに変換でき、質問紙調査から得た数量データとのマッチング作業も終了している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年にあたる2023年度は、既に当初の計画よりやや遅れが生じているため、以下の2つの方向性で研究を平行して進めることで遅れの解消を図っていく。 1つは、第1の研究課題の成果の公表に向け、分析結果を最終的にまとめ、秋頃開催予定である国内学会の年次大会での発表を目指し準備を進めていく。 もう1つは、第2の研究課題の解明に向けて、検証を進めていく。まず、2023年度早々に変換作業が済んでいなかった1件分の作業を終わらせ、現時点ではデーターベースのフレームワークが作成でき、分析作業に進められる段階までには至っている。今後の分析作業としては、第2の研究課題について第1の研究課題の結果を踏まえつつ、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき、職場内外の人間関係構築および維持における感情作業と感情管理に関する概念の抽出を行う。その後、各概念と質問紙調査データとの関係性を確認すると共に、外国人元留学生と日本人元学生との間で比較分析を行い、外国人元留学生と日本人元学生が日本社会で働く上で実施している感情作業と感情管理がどのような効果をもたらすのか、またどのようにこれらの感情作業と感情管理を学習してきているのか、またその両者間に違いはあるのかについて検証を進め、解明していく。 このように既に調査スケジュールはやや遅れ気味であるため、できるかぎり2つの方向性の研究を平行して進め、少なくとも最終年度である本年には第1の研究課題の成果を学会での報告および論文として公表し、第2の課題については分析を終了させ、公表に向けての準備に努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
主なる理由は、第2研究課題の調査を実施するにあたり、当初、紙媒体での質問紙調査および対面での面接調査を計画したが、2021年度もコロナ禍は収束せず、計画通りの実施が難しくなったことにある。そのため、Googleフォームによる質問紙およびZoomによる面接へとオンライン調査に変更し、当初予算に含めた質問紙の印刷代、面接調査のための出張費や貸し会議室代などが未使用となったためである。 ただし、この未使用額のうち、第2の研究課題における音声情報のテープ起こし業務への人件費については外注での対応が必要となったため、その費用として一部使用した。さらに、従来、所属教育機関にてライセンス契約が結ばれ、使用が保証されていた「統計ソフトSPSS」について、2023年度よりライセンス契約が打ち切られることとなり、継続して分析作業を進めるために、急遽、統計ソフトSPSS(シングル・ライセンス)を購入する必要が生じ、その購入費用としても使用した。 次年度使用額については、まず第2研究の面接調査のうち、昨年度内に音声情報をテキストデータに変換できなかった1名分のテープ起こし作業の費用として補填する。また、第1、第2の研究課題を進めていく上で、さらなる文献資料が必要となってきているため、これらの購入費用として使用する予定である。
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