研究課題/領域番号 |
20K01845
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
土井 一生 九州産業大学, 商学部, 教授 (00247248)
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研究分担者 |
高井 透 日本大学, 商学部, 教授 (60255247)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中堅企業 / 持続的競争優位性 / 事業転換 / 地域 / イノベーション / 事業システム / グローバル市場 / 多角化 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、新興国市場においてなぜ地方の中堅企業がグローバルな市場を創造し、持続的競争優位性を構築できているのかを解明することにある。というのも、新興国市場の攻略にあたっては、これまで巨大多国籍企業の市場戦略をベースに構築された既存の研究成果が、必ずしも十分な説明力を持ちえないのが、本研究の対象となる「新興国市場」と考えるからである。特に、巨大多国籍企業に比して、経営資源の潤沢性の点で劣位にあると考えられる中堅企業が首尾よく新しい市場を創出する方法や、新市場の開拓に成功した後、その競争優位性をいかに持続的なものにするかという組織能力はこれまで体系的に解明されてこなかった。本研究はこれらの課題を組織、市場、競争優位に加えて地域特性といった多角的視点から接近する。 以上の目的から、本年度は昨年度に引き続き、地域の資源を活用することでグローバル企業に進化し、持続的競争優位性を構築しうる企業の事例について九州および四国地方を中心に調査を行った。調査のフォーカスとして、今年は外部環境適応としての競争・市場環境を中心にインタビュー調査を実施した。とくに、地方から世界へと展開する企業が、どのように国内での資源を蓄積し、海外で競争優位性を構築していくのかというプロセスを解明した。本研究でとくに注目したのは、衰退産業から脱却して国際化していくというプロセスである。そのため、日本固有の伝統型産業で長期存続を遂げている企業に着目しながら、一方で取引先に依頼されて海外に進出して成功している企業を、多角的な視点から比較分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度と同様に、コロナ感染が依然として終息しないため、予定していた地方中堅企業の調査が予定通りに進んでいない。ただし、年度後半にかけて、インタビュー調査が少しずつ可能になってきた。そのため、インタビュー調査から得られたインプリケーションをベースに研究の分析枠組みの精緻化を今年も試みた。とはいえ、地方によってコロナ感染が依然として高止まりしていることもあり、地域の調査サンブルに依然として偏りがあるという問題がある。 本年度は、調査企業リストを増やすと同時に、引き続き事例研究を重ねることで、地域の偏在性を解消していき、できる限り普遍性の高いインプリケーションを引き出していく予定である。また、今まで蓄積してきた調査データを元に、本年度の後半に行う大量アンケート調査に向けて7月までにプレスタディ調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は大量サンプルのアンケート調査を行う予定である。その大量サンプルのアンケート調査に向けて、本年度の7月まで30社程度のプレアンケート調査を実施する予定である。プレ調査を行った後に、再度、調査設計に向けての分析枠組みの精緻化を実施する。現在は、アンケート調査に向けて、多様なデータから情報を収集している。既存の会社四季報などのデータはもちろんのこと、調査会社に依頼してサンプルの導出を行っている。すでに現在までに1200社程度のデータを蓄積してきている。 また、アンケート調査と同時に、協力を取り付けている九州および四国にある中堅企業などのインタビュー調査も継続して実施する。既存研究だけではなく、現実に動いている企業の事例を追いながら、より現実の企業行動を適確に捉えるような分析枠組み構築して上で、大量サンブルのアンケート調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もコロナ感染が継続して拡大したために、予定していた地方中堅企業のインタビュー調査が予定通りには進んでいない。そのため、調査費用として計上していた出張費がほぼ支出できていない状況である。そのため、次年度には当初本年度分として予定していた出張費を繰り越して、本年度実施できなかった調査活動に優先的に割り当て、遂行する計画である。 本研究におけるインタビュー調査は、仮説の構築、検証に当たって重要な意味を持ち、調査対象の偏りを可能な限り平準化するためにも必要不可欠な活動である。
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