研究課題/領域番号 |
20K01851
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
有村 貞則 山口大学, 経済学部, 教授 (40284236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 障害者保障法 / 障害者就業条例 / 障害者権利条約 / 障害者基本法 / 障害者雇用促進法 / 合理的配慮 |
研究実績の概要 |
今年度は、当初の予定どおり、既存参考文献を中心に中国の障害者雇用法と障害者雇用状況の実態把握を試みた。 中国の障害者雇用法で中核となるのは、1990年に成立し2008年に改正された障害者保障法と2007年に成立した障害者就業条例である。日本国内の先行研究では、それぞれの法律について解説を行っているが、これに該当する日本の法律との比較検討は意識されていない。この科学研究費研究課題は、日本の多国籍企業が中国の現地子会社において障害者雇用に取り組む促進要因とその成果を明らかにすることであるが、そのためには、まずは中国の障害者雇用法と日本のそれとの違いや類似点を認識しておく必要がある。そこで、中国の障害者雇用法と日本の障害者雇用法の比較検討を行った。 中国の障害者保障法に該当する日本の法律は障害者基本法、中国の障害者就業条例に該当するのは障害者雇用促進法である。その比較検討を行った結果、次の類似点と相違点が判明した。まず類似点として、日中ともに国連の障害者権利条約に合わせて法改正を実施、障害者差別の禁止規定あり、法定雇用比率やそれが未達の場合の納付金制度あり等。相違点は合理的配慮の明文規定が中国には存在しない、中国障害者連合会という日本には存在しない組織体が国や地方公共団体と並んで障害者雇用促進の大きな役割を中国で果たしている、中国では法定雇用比率が地域によって異なる、納付金の使途も企業に直接支給されるか否かでことなる、日本には企業規模別の障害者雇用支援策が法的に規定されているが中国には存在しない、法定雇用比率以外に中国では集中就業、障害者による自営・創業、農村部の障害者支援が主たる雇用促進策となっているが、日本では在宅就業の促進を重視している、などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国では障害者の法定雇用率や障害者雇用納付金(中国では障害者就業保障金という)の運用が地域によって異なる。そのために特定の地域ごとに障害者法定雇用率や雇用納付金制度の運用規定について調べていく必要がある。 この地区ごとの調査まではまだ実施できていない。また当初は遼寧省を考えていたが、中国語資料の翻訳で協力を得ている人の在住場所が山東省であるので、今後の調査の進行も踏まえて山東省に変更するかもしれない。いずれにせよ、当該地域の法的規定に関する資料を入手し、その理解に早急に取り組む必要がある。 日本企業の在中子会社における障害者雇用の程度について判断する際には、中国における障害者雇用の現状を比較する方法を考えている。そのために障害者雇用状況の実態把握を今年度試みる予定であった。 予想以上に公的データが存在していないという事態に直面したが、限られた資料ではあるが、その入手と翻訳までは行っている。そのまとめまでは終わっていないので、これも早急に取り掛かる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次の段階として、まずはアンケート調査の設計・作成が必要となる。この際には、今年度に行った日本とは異なる中国の障害者雇用法制、およびこれから行う地域ごとの法的規則を意識した質問項目を考える必要がある。 アンケート調査票が完成した後は、実際にアンケート調査を郵送する。ここでは、東洋経済新報社の『海外進出企業総論 国別編』を参考に郵送先(標本)の住所リストを作成するが、問題はその回収率である。障害者雇用というセンシティブなテーマだけに返信される回答が少ないことが想定される。そのために複数回、アンケートを郵送するつもりであるが、それでも回収数が低い事態が想定されるため、現地の日系企業商工会や現地の障害者連合会からアンケート回収面で協力や支援が得られないかを同時進行で考えていきたい。 回収後はその分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
細かい金額として5773円が残金として残ってしまった。次年度に参考図書を購入する予定である。
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