研究課題/領域番号 |
20K01852
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
目代 武史 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (40346474)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リアルオプション思考 / 環境技術 / 電動パワートレイン / 設計ルール / 不確実性 / 特許分析 |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に従い、第1に「組織認知・行動プロジェクト」の関連分野の文献を広く収集するとともに、最新の学術論文をレビューし研究動向の整理を行った。このプロジェクトは、企業において電動パワートレインの選択に関わる経営者や技術者が各パワートレインの現在価値と将来価値をどのように評価し、オプションの行使(ないし廃棄)の判断をいかに下すに関わる問題を扱う。そこで心理学の知見を取り入れた行動意思決定論を中心に文献レビューに取り組んだ。 第2に、戦略的柔軟性を実現するための前提となる実物資産へのオプション構造の織り込みに関する「オプション構造化プロジェクト」については、電動パワートレインに関する自動車メーカーの研究開発状況を把握するため、特許分析に取り組んだ。まず、関連特許の出願状況を把握した。さらに、特許同士の引用関係をネットワークとして捉え、ネットワーク分析の手法を応用した。特許の出願時、出願人もしくは審査官によって関連特許が引用される(後方引用と呼ばれる)。また、当該特許が後続特許から引用されることもある(前方引用と呼ばれる)。これらの後方/前方引用を各特許ごとに調べ、特許同士の引用関係を紐づけたデータセットの作成に取り組んだ。統計解析言語Rに付属するigraphパーケージを用い、引用ネットワーク解析に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究内容に関しては、「組織認知・行動プロジェクト」に関する先行研究レビューや「オプション構造化プロジェクト」における特許分析で一定の研究進捗を得られた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、引き続き企業調査の実施において制約が生じた。研究計画では電動パワートレインをはじめとした環境技術の開発方針と実際の活動について、自動車メーカーおよび主要部品メーカーにヒアリング調査を予定していたが、実施が困難となった。そのため、学術論文の文献レビューやアニュアルレポートなどのアーカイバルデータの精査、特許データの分析など、企業訪問調査に依存しない調査研究に取り組んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後はウィズコロナ型の企業活動が定着し、2022年度以降は企業訪問調査も徐々に可能となっていくと期待される。しかし、その実現には依然として不確実性が残ることから、企業訪問調査に依存しない調査アプローチへとシフトさせていく。 具体的には、「組織認知・行動プロジェクト」に関しては、アニュアルレポートや中期経営計画、その他プレスリリースなどの資料、新聞や業界誌などでの報道といったアーカイバルデータをより積極的に活用する。また、「オプション構造化プロジェクト」に関しては、上記のアーカイバルデータに加え、特許データを用いた定量的分析を実施していく。アーカイバルデータから読み取れる電動パワートレインに対する認識と実際の技術選択や技術開発活動の関連を特許データと組み合わせて解析していく。 これと並行して、自動車メーカーとの遠隔ミーティングによるヒアリングを実施し、分析枠組みと仮説の妥当性について検証を行う予定である。 以上の研究経過は、国内外の学会(組織学会、日本経営学会、Gerpisaなど)で研究発表を行うとともに、International Journal of Automotive Technology and Management誌などの国際専門誌に投稿していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に予定していた国内出張(企業訪問調査)や海外出張(国際学会への出席)がキャンセルになったことが大きな理由である。 次年度は、まず車両開発に関する国際的な有料データベースに予算を使用する予定である。また、国内出張(企業調査)を徐々に再開する予定であるが、海外出張については引き続き慎重に検討する。また、特許データベースの使用料および統計分析ソフトにも予算を使用していく予定である。
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