研究課題/領域番号 |
20K01862
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐野 嘉秀 法政大学, 経営学部, 教授 (40345111)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育訓練 / 人材育成 / ライン管理者 / OJT / off-JT / 自己啓発 |
研究実績の概要 |
本研究は、職場の人材育成に対する人事部門の関与が機能し、企業としての人材育成の方針や目標がライン管理者の人材育成行動(OJT等)として実行される条件の解明を試みるものである。この研究課題に即して、2022年度には、人事部門の関与する人事施策である教育訓練のライン管理者における機会と、ライン管理者による職場での人材育成行動との関係の分析を試みた。その成果として、研究成果「管理職における教育訓練機会と人材育成行動」を公表した。同成果は、既存アンケート調査の個票の再分析による。 分析結果として、第1に、教育訓練の担い手でもあるライン管理者は、教育訓練の機会を得ることで能力を向上させている。 第2に、教育訓練の内容に着目すると、ライン管理者(課長層)では、とくに部下に対するOJTや担当職場の範囲を越えた仕事の経験、専門的知識等に関する研修の受講、自発的な講習会等への参加や自学・自習による自己啓発をつうじて能力を向上させている。 第3に、ライン管理者の能力向上は、部下の人材育成への取り組みに結びついている。すなわち、直近 3 年間に能力向上を経験したライン管理者(課長層)は、部下育成のための取り組みを広く行い、その成果についての自己評価も高い。その理由として、ライン管理者は、自身が受ける教育訓練をつうじて、人材育成の担い手としての役割を受容するとともに、これを実践する能力を高めていることが考えられる。 第4に、以上から、企業が教育訓練をつうじてライン管理者の能力向上を支援することは、ライン管理者だけでなく一般社員の人材育成も促す可能性がある。企業の人材育成において、ライン管理者を対象とする教育訓練がとりわけ重要であることが示唆される。 同成果のほか、研究課題に関する企業へのインタビュー調査による知見の一部をもとに、2本の共著論文にも貢献している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、2021年度から引き続き研究課題に関する先行研究のレビューを進めるとともに、本研究のテーマである人材育成をめぐる人事部門とライン管理者のあいだの連携に関する研究として、既存アンケート調査の個票データをもとに再分析を行い、その成果を論文として公表した。ただし新型コロナウィルス感染拡大の影響を踏まえ、昨年度まで実施を見送っていた企業事例へのインタビュー調査は、2022年度には予備的な調査を開始した段階にある。以上を総合的に判断して、現在までの進捗状況について「(3)やや遅れている。」という自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、先行研究のレビューを行い、既存研究を踏まえた調査分析枠組みの検討を行うともに、既存アンケートの個票データを用いて、人材育成や、人事部門とライン管理者の関係に焦点を当てた再分析を行う。さらに企業等へのインタビュー調査を行い、研究課題に関する資料収集を進め、研究と取りまとめにつなげる。調査先には、研究の趣旨・公表の方法等を丁寧に説明し、十分な同意を得たうえで調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、企業事例へのインタビュー調査を開始したものの、新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、予備的な調査にとどまり、本格的な調査実施には至らなかった。これに伴い、次年度使用額が生じている。2023年度は、新型コロナウィルス感染拡大の状況も踏まえつつ、インタビュー調査を実施することで、次年度使用額分の助成金を有効に使用する予定である。
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