研究課題/領域番号 |
20K01872
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田原 慎介 京都大学, 経済学研究科, ジュニアリサーチャー (80779976)
|
研究分担者 |
山 泰幸 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (30388722)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 介護組織 / 信頼 / サービスの価値創造 / 介護従事者 / 質的分析 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護組織(高齢者介護施設)が地域の多様なステークホルダーと信頼関係を構築していくことが、その組織の人材と利用者の定着に及ぼす影響について明らかにすることである。この研究目的に至った背景は、次の2点である。1点目は、従来、人材の定着は人的資源管理、利用者の定着はマーケティングの観点から研究されてきたが、介護に限定して考えると、介護業界において、人材と利用者の定着という課題は依然として解決されず、深刻化していることである。2点目は、多くの介護組織がこれまで軽視してきた地域との関わりが重視されるようになり、介護人材がこれまで以上に利用者を中心とする地域のステークホルダーと深く関わることで、人材や利用者の定着につながるのではないかと介護現場のフィールドワークを数多く実施してきた研究代表者が考えたことである。 2020年度は、サービスの価値創造と信頼に関する最新の研究成果を中心にレビューし、1~2か月に一度、研究代表者と共同研究者がレビュー結果についてZoomを使ったオンライン打ち合わせを開催することで共有し、分析枠組みを構築していくために議論した。また、2020年度は、介護組織において介護に従事している介護人材と利用者との相互作用に焦点を当て、介護サービスの価値を創造するプロセスにおいて、介護人材のどのような行動を通じて利用者との間にどのようなタイプの信頼がどのように形成されているのか、パイロット調査の位置づけで北海道の介護組織に協力していただき、Zoomを使ったオンラインのインタビュー調査と動画から得られた質的なデータをもとに質的な分析を行った。この研究成果は、2021年度に開催される国内外の学会で研究発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、介護組織へのフィールドワークを主体とした研究計画を立てていたが、新型コロナウイルス感染者の増加によって、研究者による高齢者介護施設への訪問が難しい状況にあるため、オンラインでのインタビュー調査や動画の提供に切り替えてデータ収集を行っているため。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、アンケート調査を実施することで信頼を計量的に測定することを目的の1つとしているが、介護組織を対象としたインタビュー調査や観察などエスノグラフィックな調査も重視している。新型コロナの感染状況が落ち着くまでは、研究者が介護組織を訪問して現地での質的な調査を実施することは難しいと考えられるため、今後はZoom等を用いたオンラインでのインタビュー調査および観察を実施することで、質的分析に必要となるデータを収集していくことを考えている。また、介護従事者に利用者と相互作用している動画を収録していただき、その動画を分析に用いることも予定している。 2020年度は、パイロット調査の位置づけで北海道の介護組織にオンラインでのインタビュー調査と動画の提供に協力していただいた。2021年度は、引き続き北海道の介護組織に協力していただくことに加えて、関東や関西の介護組織にも協力していただく予定である。また、2021年度は質的な調査をもとにアンケート調査票を作成し、アンケートのパイロット調査まで実施する予定である。 質的な調査の分析結果は、国内外の学会において研究発表し、他の研究者からのコメントおよびアドバイスをもとに研究成果をブラッシュアップして、学術論文を国内外の学術誌へ投稿していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は、介護組織へのインタビュー調査および観察の実施をZoomを用いたオンラインへと切り替えたことである。2021年度も新型コロナの感染状況次第でインタビュー調査と観察はオンラインを考えているが、研究成果を国内外の学会で積極的に発表していく予定であり、学会の参加費や国際ジャーナルへ投稿するための英文校正料に充てる予定である。また、アンケート調査を実施するためのパイロット調査を実施する予定であり、その実施にかかる諸経費の負担にも充てる。さらに、本研究を遂行するために必要となる書籍や論文の購入にも充てる予定である。
|