研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来、多くの介護組織が取り組むべき課題として考えてきた地域との関わりに問題意識を置き、介護組織が多様なステークホルダーとどのような信頼関係をどのように構築することが、介護従事者(介護者)の組織への定着とサービス利用者(被介護者)の継続的なサービス利用にポジティブな影響を及ぼすのか、について介護従事者の行動やステークホルダーとの相互作用プロセスに焦点をあて、エスノグラフィックな調査手法を中心的に用いて経営学的な観点から明らかにすることであった。 最終年度は、COVID-19の影響で介護組織でのフィールドワークが制約を受け、動画分析やオンラインでのインタビュー調査で対応していた調査結果について、実際にフィールドワークを行うことで、調査結果を補い、研究の質を高めることに努めた。また、研究成果は、欧州組織学会(EGOS)の“Futures and Ethics of Care: Reorganizing Work, Labour, and Life”部会と経営行動科学学会年次大会で発表し、University of Windsorでは大学院生向けに招待講演を行った。 研究期間全体を通じて、特に介護従事者がサービス利用者とどのようなコミュニケーションをどのように図ると介護サービスの価値が生み出されるのか、COVID-19前後での変化も考慮しながら、信頼構築という観点から検討してきた。具体的に、介護経験が豊富な介護従事者と未熟な介護従事者とでは、サービス利用者とのコミュニケーションがどのように異なるのか、介護従事者とサービス利用者の「行動」、「会話」、「表情」から比較分析することを通じて、信頼のタイプに違いがあり、それが生み出されるサービスの価値に違いを生み出していることを深く考察した。
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