研究課題/領域番号 |
20K01894
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
山本 崇雄 神奈川大学, 経済学部, 教授 (30318761)
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研究分担者 |
佐藤 幸志 拓殖大学, 商学部, 教授 (00287955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育関連ビジネス / 国際社会起業家 / 新規事業創造 / 社会的企業 / 東南アジア |
研究実績の概要 |
本研究課題では、「広義」の教育関連ビジネス(情操や健康などに関する教育も含む)に焦点をあて、いわゆる「制度のすき間(institutional void)」が存在するアジア新興国で、どのように日本企業が参入を図ってきたのか、また参入後どのように事業構築を行っているのかについて、インテンシブな現地調査を行い、明らかにすることを企図している。研究蓄積が分厚い日本の大企業だけでなく、日本のベンチャー企業や中小企業にも焦点を当てることも特徴となっている。 しかしながら、昨年度からの新型コロナウイルスによる海外渡航が困難な状況が今年度前半にも続くこととなった。また、スリランカやミャンマーといった国への実地調査を今年度に行う予定であったが、財政破綻やクーデター後の混乱の影響により、これらの国への調査を断念せざるを得なくなった。そして研究計画の見直しを行い、カンボジアにおける日本企業の調査をようやく実施することができた(2023年3月)。そのため、後述のとおり、本研究は当初の計画に沿う形では進めることができていない。 他方、上記研究課題に関する先行研究についての渉猟については、ほぼ計画通り進めることができた。具体的には、「制度のすき間」概念の再検討に関する研究について、研究ストリーム(国際ビジネス論と社会起業家論)による差異があることが明らかとなった。そして、矛盾のマネジメントとソーシャルビジネス、アジア新興国における制度的企業家に関する研究の整理についても、昨年度から引き続き行ってきている。 研究全体としては、アジア新興国におけるヒアリング調査の遂行が、研究計画よりも1年半遅れてしまっているため、補助事業期間の延長を行う予定であり、次年度に研究の公表を行う所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題では3カ年の研究計画を想定しており、本年度が最終年度であった。しかし、1-2年目にインテンシブに実施する予定であったアジア新興国における企業・組織のヒアリング調査について、遅れを取り戻すことが困難であった。調査を計画していたミャンマーでは、2021年のクーデター後も混乱は収束しているとは言いがたく、本研究課題では実証研究を断念することとした。またスリランカでも本年度中に財政破綻が生じ、国民生活に多大な支障が出ることとなったため、調査は難航を極めた。また、新型コロナウイルスによる新興国への渡航への影響も、今年度の前半時点では継続しており、オープンな企業訪問は困難であった。 この結果、研究代表者と研究分担者は協議の末、現地調査を実施する対象国を新たに選定し直すこととし、カンボジアを調査国として加えることとした。そして、新型コロナウイルスの影響が収まった2023年3月に、在カンボジアの社会企業2社とNPO2組織について、ヒアリング調査をようやく実施することができた。 また、本研究課題に関連する文献レビューについては、研究分担者と研究領域を分担し、複数のトピックに分け、文献の渉猟を行った。たとえば、「制度のすき間(institutional void)」概念の再検討を行ってきている。「制度のすき間」概念は、Khanna & Palepu (1997)が端緒であるが、KhannaとPalepuらによる定義や考え方がその後の研究で変化してきている。また、(国際)社会起業家に関する研究では、制度のすき間を、多国籍企業にとっての「新事業創造機会」として捉えるものが散見されることが明らかとなった。また国際ビジネスの様々な研究で、「制度」に焦点を当てる際、同概念や分析レベルが多種多様に論じられている点も大きな課題である。こうした文献レビューについては、次年度に公表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗が遅れているため、1年間の事業期間の延長の申請を行うこととした。次年度では、引き続き調査協力が得られた在カンボジアの企業に対して、年度の半ばまでに継続的な調査を実施する。具体的には、小規模のソーシャルビジネスやNPOは金銭的資源に乏しい傾向があるため、新型コロナウイルスによる影響は非常に甚大であり、新興国における事業構築にも影響していることがわかった。こうした点について、残る研究期間中に可能な限り調査を実施することとしたい。 そして、次年度の後半において、レビュー論文の取り纏めや学会報告を行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も前半においては、新型コロナウイルスの影響、ミャンマーにおけるクーデターの影響、スリランカにおける財政破綻の影響から、アジア新興国におけるヒアリング調査を断念せざるを得ない状況となった。今年度の最後に、カンボジアにおける調査を実施することができたが、その際に、われわれが想定しなかったような新たな発見事実を得ることができ、海外実地調査の重要性を改めて痛感した次第である。そのため、次年度に継続的なヒアリング調査を実施することとしたため、次年度使用額が生じた理由となっている。
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