本研究の目的は、戦略的人的資源管理(SHRM)論の分析枠組、具体的にはシューラー=ジャクソンモデルを用いて、組織成果を高める組織行動およびHRMを明らかにすることにあった。1年目は、競争戦略すなわち企業行動に関する量的調査を実施した結果、未熟型、独善型、受動的忠実型、能動的忠実型、プロアクティブ型(防衛型・探索型)といった、5タイプの企業行動を抽出することができた。2年目は、HRMを特定化および操作化するために、経営者を対象に調査を実施したところ、人材育成を重視している経営者の多いことが明らかになったため、HRを固定化し、育成を重視するタイプとHRを変動させ、獲得を重視するタイプに分けることにした。さらに、意思決定において個人よりも組織を重視するか否かでタイプ分けをすることにした結果、伝統的日本型、非正規依存型、自営型・プロ型、フォロワーシップ型の4タイプを抽出することができた。3年目は、組織行動すなわちフォロワーシップ行動を特定化および操作化するために、さらなる取り組みを行った。主な取り組みとしては、民間企業、コンサルティング・ファーム、中学校に勤務する、フォロワーシップに興味関心を有する知識人を構成メンバーとするフォロワーシップ研究会を設立し、議論と考察を重ねたことである。その結果、従来通り、組織に貢献し得るフォロワーシップ行動として、受動的忠実型、能動的忠実型、プロアクティブ型といった3タイプのフォロワーシップ行動が抽出されることとなった。最終年度は、これらを踏まえて、大規模な量的調査を実施した。創造的成果を目的変数として、企業行動、HRM、そしてフォロワーシップ行動を説明変数とする重回帰分析を実施した結果、プロアクティブ型企業行動およびプロアクティブ型フォロワーシップ行動が統計的に有意な正の影響を与えていることが明らかとなった。
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