研究課題/領域番号 |
20K01915
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
松本 茂 城西国際大学, 国際アドミニストレーション研究科, 教授 (80772079)
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研究分担者 |
砂川 伸幸 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (90273755)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | M&A / 新結合 / 企業戦略 / 相乗効果 / 両利きの経営 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、海外M&Aの定量、定性分析の結果を「海外M&A新結合の経営戦略」として東洋経済新報社から上梓した。 定量分析では、日本企業による海外M&Aの戦績(買収金額100億円以上の全案件)を1985年から 2001年の草創期と2002年から2011年の発展期に分け、買収後の利益成長と撤退・売却から成否判定を行った。その結果、草創期の買収は116件中、失敗51件,成功9件であったが、発展期では139件中、失敗28件、成功17件で、日本企業による海外M&Aの成否には改善が見られた。また、統計検定から規模の優位性、追加買収の実行が成否を分ける要因となっていることが分った。 定性分析では、ダイキン工業、グローリー、DMG森精機、村田製作所、堀場製作所など海外M&Aで世界一を実現した製造業企業へのインタビュー調査をもとに、ケーススタディの手法を用いて、相乗効果創出の詳細な分析を行い、海外で事業の結合を重ねることで、本来のイノベーションを体現した日本の成功企業の姿を描いた。また、経営理論とM&Aの接合を試み、シュンペーターが「経済発展の理論」で説いた、非連続な新結合の遂行に着目し、経営における買収の役割をこの「新結合」から問い直した。そして、この新結合に連なるイノベーションの研究にある、深化と探索の両利きの理論から買収後の組織設計のあり方を模索した。 上記の分析から、成熟市場占有、供給連鎖占有、製品群拡張、新市場形成、防御の5つの買収モデルを導出し、各モデルに適応する組織設計のアプローチを、分離型、非分離型、ハイブリッド型、システムサプライ型、スポンサー型に分類して成功モデルを提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
買収後の財務データ分析による成否判定、統計検定、インタビュー調査によるケーススタディを終え、令和3年度に「海外M&A新結合の経営戦略」(東洋経済新報社)として上梓することができたことから、順調に推移している。 著書は日本経済新聞と読売新聞の書評欄で紹介されるなど、高い評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、2012年以降の海外M&Aについて成否とその要因を分析し、データを増やすことで、これまでの研究から導出したM&Aによる利益成長モデルを補強していく。また、日本企業による海外M&Aに関する研究成果をセミナーや学会などの場で積極的に公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はオンラインで会議やインタビューを行ったため次年度使用額が発生した。次年度以降、旅費などとして使用する。
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