研究課題/領域番号 |
20K01916
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
中野 勉 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (10411795)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プラグマティックな価値評価 / ネットワーク / クリエイティブ・インダストリー / ハイエンド・オーディオ / デジタル化と認知 / アクターとオブジェクト / performativity / 市場 |
研究実績の概要 |
当研究は、欧米の経済社会学で研究が進む「プラグマティックな価値評価 」(pragmatic valuation) の方法に、ネットワーク関係性の概念を導入し、実証から 市場メカニズムの理論化を進めるものである。製品やサービスの価値はモノ自体に内在するのではなく、アクターである個々の消費者が、オブジェクトとインタ ラクトし、その価値を認知する行為にあると考える。遂行性と関係性を応用し、マイクロからマクロへの市場の理論化を目指す研究であり、音に関するビジネス であるハイエンド・オーディオ市場においては、 オーディオ・メーカーのエンジニア、マニア、プロの評論家が、技術論からの計量に加え、定性的かつ実践的 な評価のディバイスを多角的に応用して、多義的に音を評価する。フィールドワークでのインタビュー、文献調査、エンジニア・評論家・編集者・プロショップのオーナーへのインタビューなどからの内容分析から、コミュニティの合意が組織化されるプロセスの解明を続けた。オンラインのコミュニケーションにより、インタビューや文献整理を続けた。成果として、研究代表者は、単著論文“Pragmatic valuation of the analog high-end audio: Monsters missing in the digital marketization”を執筆し、2024年に Cambridge University Press から出版予定の Geiger, S. et al eds. Market Studies の1章として、収録される。また、これらの知見を活かし、市場のデジタル化がするマネジメントに関し、経営組織についての、書籍の1章を単著として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナからの学術活動の回復過程にあり、本務校である青山学院ビジネススクールでは、授業のオンライン化、及び、対面とライブでの学生とのインタラクションを同時に行うハイブリッド化を進めた結果、その実践のために、対話型やグループワークを多用する社会人MBA教育に多くの時間と体力が奪われることとなった。研究代表者にとっては、個人的にはリサーチの時間の確保に大きな影響が出た。また、多くの市場やビジネスに多大な影響が出たことと同時に、対面で のフィールドワークやインタビューが難しくなったため、ネットワークづくりと研究環境づくりに多くの時間とエネルギーを費やした。海外渡航が可能となりつつあるが、旅費の高騰もあり、採択された海外での学会発表2件を辞退せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナの影響で、海外渡航が現実的に不可となり、海外での学会発表ができず、予定していた旅費の使用がなくなった。また、オンライン化とデジタル化が進み、インタビューや情報収集、学術的なディスカッションもオンラインへの比重が高まった状況で。今後は、2024年9月から1年間のサバティカルとなるため研究に専念できる。この間Copenhagen Business School, Columbia University,カリフォルニアなどを訪問し、海外での活動を再開する予定であるが、旅費や宿泊費の高騰への対応が必要となる。 研究代表者は、スタートアップ企業のコミュニティ、音のビジネスに関係するプロフェッショナルのコミュニティを追っている。音に関するビジネスなどクリエイティブ・インダストリーにおいて、オンラインと対面を組み合わせ、アクターがどのようにビジネスを再構築するのかが、文化とテクノロジーが交錯する中で、様々な変化もみられる。製品やサービスとしてのオブ ジェクトへのアクターの認知、遂行性からの解釈と 再定義、ステークホルダーによるネットワークの組み換えについて、デジタル化への市場の変化についても、アカデミックなリサーチを展開する。学術雑誌への単著論文の投稿を積極的に行う 最終的なゴールとして、どのようなつながりのエージェンシーのパターンが、組織のイノベーションを生み出すのかを、偶発的、創発性、スラック、曖昧さ、多義性、創造的な摩擦などの観点から理論化する。その後、日本語及び英語での書籍と査読ジャーナルへの投稿を進めることで、学術的な貢献を問いながら、結果をホームページ、セミナーなどで公開し、実務家への啓蒙活動を含め、社会還元を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、海外渡航が現実的に不可となり、海外での学会発表ができず、オンライン形式になり、予定していた旅費の使用がなくなった。また、オンライン化とデジタル化が進み、コロナもようやく終息しつつあり、海外での活動を再開する予定であるが、旅費や宿泊費の高騰と円安の為替レートへの対応として、準備金が必要となる。2024年9月から10月にはデンマークの Copenhagen Business School,11月にはニューヨークの Columbia University、2025年2月にはカリフォルニアに滞在予定である。
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