研究課題/領域番号 |
20K01918
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
露木 恵美子 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (10409534)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 場 / 現象学 / コミュニケーション / 組織改革 / 組織開発 / 組織文化 / 桜えび漁 / 地域コミュニティ |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍で予定していた国内外現地調査の多くを中止せざるを得なくなった。そのため、研究成果を公開するための書籍『職場の現象学入門』の執筆を中心に行った。 (1)出版プロジェクト 2021年6月より『職場の現象学』の共同執筆者の山口一郎氏と編集者の柳田正芳氏と共に、中央大学大学院戦略経営研究科の修了生(社会人)8名と『職場の現象学入門』プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトは、『職場の現象学』の内容を、専門知識をもたない社会人にもわかりやすく解説することで、研究成果を一般に啓発することを目的とした。プロジェクトは、月に1回、対面およびオンラインにて実施し、職場の実情に合わせた内容となるよう心掛けた。わかりやすい言い回しやイラストを多く挿入した。計8回プロジェクトミーティングを実施することで、2022年2月までにほぼ原稿が完成した。出来上がった原稿は『働くことの意味を問い直す―職場の現象学入門』というタイトルで、2022年5月に白桃書房より上梓される予定である。 (2)国際共同研究の促進 コロナ禍で実施できなくなった現地調査の代替として、オランダ在住の研究者Renate Stephen氏と数回にわたりオンラインでの会議をもち、社会人を対象とした「場のワークショップ」を英語で開催することを計画した。コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻によって現地での実施が難しいため、2022年5月に延期してオンラインにて実施予定である。 (3)国内調査 国内調査は、県外への移動が可能になった時期に3回訪問調査を実施した。桜えび漁も、新型コロナ禍の影響をうけて2020年度は何度も出漁できなくなる事態に見舞われたが、2021年度は春と秋は不漁ながらも漁を行うことができた。一方で、船主会と加工組合との建設的な対話の場をもつことができ、敵対ではなく協業を模索する指向性が出てきたことは特筆すべきことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内外のフィールドワークがほとんどできないという状況であった。特に海外調査は実質的に不可能(当該地域への渡航が困難)になった。感染が終息しつつあった2021年3月末に、現地調査を計画したが、ロシアのウクライナ侵攻によって、それも断念せざるを得なくなった。 国内調査については、由比港漁協の専務や青年部長、地元加工組合の組合長などに、訪問調査ならびに電話インタビューを数回行う程度にとどまった。 一方、「場の理論」をより具体的に展開し、かつ一般啓発活動の一環として、『職場の現象学入門』の執筆を加速した。2021年6月からスタートした出版プロジェクトでは、「場の理論」の職場への応用を模索している社会人8名との共同作業を行い、難解な理論部分をかみくだいた表現にするとともに、イラストなどを挿入することで読みやすくすることができた。その結果、2月初旬に初稿を出版社に入稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.コロナ禍が終息してきたため、国内の実地調査を再開したい。具体的には、駿河湾の桜えび漁についての現地調査を定期的に行うことに加え、地域コミュニティの形成に関する調査を他の地域でも実施する予定である。すでに、2021年11月に富山県南砺市の合掌集落の一つである菅沼地区で予備調査を行った。 2.海外調査については、ロシアのウクライナ侵攻のため、日本と欧州の定期便の変更が大きく、今年度も実施できるか見込みがたっていないが、2022年度内にオランダの研究者と共催で、オンラインによる「場のワークショップ」を開催する予定である。また、可能であれば2022年度中に、渡欧して現地調査や現地での場の理論の啓発活動を実施したい。 3.2021年2月に原稿が完成した『働くことの意味を問い直す‐職場の現象学入門』は、2022年5月に上梓される(決定)。出版された書物を使って以下のことを実行していきたい。(1)職場の現象学のHPの充実、(2)入門書を使った対面・オンラインの勉強会を開催、(3)『職場の現象学』ならびに『働くことの意味を問い直す』の2冊を英語に翻訳して出版する(翻訳作業を開始し、出版社のめどをつける)。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年においては新型コロナウイルス感染症およびロシアのウクライナ侵攻によって、国内外の現地調査がほとんど実施できなくなってしまったため、旅費を使いきれなくなった。 2022年度については、新型コロナウイルス感染症およびロシアのウクライナ侵攻の終息を見極めて、国内外の現地調査を再開する予定である。 また、国外への研究成果の発信のため、英語での『職場の現象学』およびその入門書の執筆・発刊を予定している。
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